第三分室 風の地 2 立場が違う以上、一緒にはいられない。 それはよくわかっている。 それこそ、痛いくらいに。 でも、理性と感情は別なもの。 頭では理解していても。 本当は…心の深いところには。 こんなにもあの人を慕っている私がいる。 幼い日の憧れとは別の想い。 風のようなあの人への思慕。 「疲れているのかもな。最近、仕事が多かったしよ…」 武王の声が聞こえる。 「そうでもありません。…それより武王、そろそろ戻る時間です」 「もう少しぐらい平気だろ。 それにお前、羌族なんだし、こういうところは好きなんじゃないのか?」 …私を気遣ってくれているの? そんなに私の様子はおかしかったのかしら。 でも、今はその言葉に甘えていたい。 草原は懐かしい場所。 私たちにとっての母なる大地。 草の香りが心地いい。 帰ってきたと、そう思えるから。 それに。 なによりも、風を感じることができるから。 [前へ][次へ] [戻る] |