第三分室 立ち待ち月 1 太公望が石琵琶である原形を現した王貴人を生け捕って、禁城へとやって来たのは三日間のことだった。 始めの晩は、名月と称してもよいくらいの見事な望月。 時は流れ、月は欠け、望月は立ち待ち月へと変わっていく。 三日間。 必死な太公望を見ながら妲己は楽しんでいた。 自分が決して負けることはないと確信していたからこそ、必死な太公望を見るのは何よりも楽しい。 楽しみながらも、隙はない。 隙があるように見せるのも策の内。 絶対的な力の差。 いまの太公望では妲己に敵うわけがなかった。 太公望もそれを承知していたのだろう。 いろいろと策を講じたのだが、策でも妲己の方が上。 完全な敗北だった。 太公望が敗れたその日の晩。 妲己は捕われた太公望が捕まっている地下牢をひとりで訪れた。 日付が変わる深更。 城内の誰もが眠りについている時間。 彼女はよくこの時間にひとり寝床を抜け出し、城外へと赴く。 食餌をするために。 [次へ] [戻る] |