第二分室
花の戴冠 2
「ユーリ!」
血盟城の執務室で、未だに慣れない書類整理と格闘していたユーリは、グレタの声に顔を上げた。
「グレタ。珍しいな、ここに来るなんて」
普段、ユーリの仕事の邪魔をしないようしているグレタが執務中のユーリを訪ねるのは珍しい。
実はユーリの仕事はまだ終わっていないのだが、グレタが来た時点で休憩時間になっている。
「あのね、ユーリにこれあげる!」
小さな手から差し出されたのは白い花冠。
「これは…
もしかして、グレタが作った?」
「うん。そうだよ」
グレタの手作り。
その事実は、ユーリをとても幸福にさせた。
この冠を作っている小さな花のひとつひとつに、グレタの気持ちが込もっているのだ。
「ユーリ、かぶせてあげるね!」
そっと頭を屈めたユーリの頭上にささやかな花の冠が煌めく。
「グレタは、こっちの方が好き 」
にこにこと見上げてくるグレタに、ユーリも同じように笑み返す。
「おれも、そう思うよ」
きっと今の自分にはまだ、きらびやかな金の冠よりこの控え目な花冠の方が似合うのだろう。
もちろん、この花冠には金や宝石の冠とは違った価値があるのだが。
「ありがとうな、グレタ」
自分は魔王といっても、まだまだ未熟だけれど。
この花冠のようにささやかでも、皆の力になりたい。
グレタの花冠は、こんなに小さくても自分をこんなに幸せにしてくれるのだから。
「グレタの花冠、ずっと大切にするよ」
この幸せな気持ちと一緒に、いつまでも。
終
…実はこれ、グウェン&アニシナ編の副産物だったりします(苦笑)
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