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妖怪パロ あやかしあやし
陸-以津真天、自らを曝し狸汚点を曝す-

「以津真天って……確かあれでしょ?」
「人の魂をすいとるっていう、闇に一番近い妖怪だ」
雷蔵と三朗が以津真天と聞いて思い出す全てだ。


それ以上は何せ本物にあった事がないため分からないのだ。

「間違ってないがな。以津真天は戦場に居をおき、亡くなった人の魂を還す妖怪なのだ」

仙蔵は伊作が手当てをしたであろう指先の白を見ながら呟いた。

「人が死に魂を天に還す。行く先もない魂は自らが取り込んで、迷える魂がないようにする。常に人の死に体をみて、それらを弔っているのだ。血の匂いが濃いのは仕方あるまい」

一度開いた仙蔵の口は、伊作が言いたくない事も言うのを躊躇っていたことも、洗いざらい吐き出してしまうまで止まらない。

「ただ、伊作は馬鹿見たいに優しいよ。でなければ人の命を救いたいと言ってこんな所まで来たりしないだろうよ」

仙蔵の瞳は優しく、八左エ門の額に布をのせ、甲斐甲斐しく世話をする伊作を見ていた。


殺気もなく、ただ八左エ門が起きるのを望んでいる自分たちと同じ、いや自分たち以上に心配しているかもしれない。


「脈も正常だし、氣に問題もない。うん、暫く寝ていたら大丈夫なんじゃないかな?文次郎、この子長屋まで連れていって上げてよ」
伊作は三朗と雷蔵の少しだけ申し訳なさそうな顔を見てから、気にもしてないといった風に文次郎に言葉を返した。



「あの、すいませんっ。折角、八左エ門を助けてもらったのに、僕たち血の匂いが強いからって…ほら三朗も謝って!」
「……すんません」

雷蔵に頭を押されるようにして謝った三朗に伊作は気にしてないよ、と呟いた。

「私が血の匂いを纏っていたから警戒しただけでしょう?仕方がないよ。改めて、私は二年は組の善法寺伊作だ。よろしく」
伊作が手を差し出せば雷蔵も、少しだけ戸惑って、その手を握った。


「僕は一年ろ組、陰神刑部の不破雷蔵です。こっちは同じ組の…」
「風狸の鉢屋三朗」

「って、君たちがあの噂の?」
伊作が、二人の名前を聞いて身を乗り出して来た。

三朗と雷蔵は、お互いの顔を見やって何かあったかしらと首を傾げた。


「聞いてたよー?百匹、いや千匹以上はいる狐狸や下級妖怪たちの頭やってたんでしょ?」
伊作の瞳は明らかに何かを知りたい少年の瞳だ。


それに対して、二人はあははと空笑いを繰り返すしかなかった。


しかしそれも、二人が望んでやった訳ではなく、副産物でしかないのだが。


「ま、まぁまぁ、その話はまた今度にしましょうや」
「そ、そうですよ!潮江先輩、八よろしくお願いしまーす」

二人は八左エ門を文次郎に頼みそそくさと逃げ出した。


「逃げたな」
「さすがの三朗も、あれは汚点らしいな!」
二人の内情をしっている仙蔵と文次郎は顔を赤くしながら(三朗は狐面だったので良く分からなかったが)二人を見ながら笑いを溢した。


「えー?教えてくれたっていいのにー」
口を尖らせて不満を垂れる伊作に仙蔵は少しだけだぞ、と言いながらお茶を要求し、文次郎は、怒られても知らねえぞと仙蔵をたしなめながらも、本気で止める気はないようだ。



むかーしむかし、あるところに。


仙蔵は少し熱く入ったお茶を吹いて冷ましながら、二人の過去をかいつまんで話した。

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