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妖怪パロ あやかしあやし
伍拾壱 妖主を探し、鴉学園に飛ぶ
どこにいますか。
どこにいるのですか?

我が主であり、我が半身。
私は貴方をずっと探しています。

もう私は必要ないのですか。
私は、わたしは。

貴方が来るまで歌いましょう。
貴方が私を求めてくれるのなら必ずきてくれるでしょうから。


とある村になんとも言えぬ鳥の鳴き声が響いた。
その声は寂しそうな声で、村人の不安をあおった。

ひいほう、ひいほう。

寂しく泣く煙管を持った鳥は、主を探して練り歩く。

灯を灯して練り歩く。


探し物をしている鳥に、白い尾を持った狐が呟いた。
「探し物が見つかるように、してあげましょう」

鳥はそれに気がつかない。
鳥はあくまで、力そのもの。
知性も理性も持ち合わせていない。
唯、ある妖怪から力だけを引き落とされた哀れな塵芥。

昔、ある妖怪が自らの力を嘆いて切り捨てた力。
在るのは本体に、主に近づきたい、戻りたいという本能だけ。

そんな彼にはその狐が言っていることなど分からなかった。

ひいほう、ひいほう。

鳥は変わらず泣き続ける。
しかし、とたんにその力が大きくなった。
鳥の鳴き声は空気を振動させ、摩擦を起こす。
そしてそれは灯を呼び出す。

橙の色をした鮮やかな翼がばたばたと羽ばたくたびに羽が舞い散る。
舞い散った羽は村の屋根に、積んだ薪に、藁に大鋸屑に。
そこいらに堕ちて明るく燃え盛る炎になる。

ひいほう、ひいほう。

主を求める鳥の声は止まらない。
泣きやまぬ鳥の声とあい重なって焔は高く燃え続ける。


「わ、これって・・・まずくない?」
黒い髪を空にたなびかせたその、ひとでないものは呟いた。
山伏のような衣装に身にまとい、焼かれている村を眼下に見下ろす。
彼の耳と腕には黒い翼が生えていた。
村の中央広場にただ鳴く鳥を見つけ、奴がこの火事の原因だろうと予測をたてる。
そしてあれぐらいの妖怪が作った火ならば簡単に消せるだろうとたかをくくった。
足元で火事だ、逃げろと叫ぶ村人たちが逃げていくのを見て自らの腕を払う。

その腕と掌には風が纏い、燃え広がろうとする炎をさえぎる。
のちに中に閉じ留めた焔を消そうとしたのだが、炎は一向に衰えない。

「・・・・俺の力で消せない・・・?」
何時もならばこの風の力で対外の焔は消せるのだ。
知り合いの黒狐が放つ蒼い焔さえこの風は消す。
彼のあやつる風には、違う属性の氣があと二つも入っているのだから。

だが、この焔はその風でも消しとめることが出来ない。
燃え広がるのをおしとどめるのが出来るくらいだ。
これはかなりまずい、と彼は奥歯をかんだ。
ここまでの大火災、村をひとつ焼き払う火事、噂にならないはずがない。
それに妖怪がからんでいたとするなら、尚更報告しないわけにはいかない。

とりあえずはここより程ちかい場所に何人かの妖怪が集まっていると言っていた。
たしか知り合いもそこにいたはずだ。
彼らに報告をしてから、帰ろうかとも思ったが、近くに自分の眷属がいたので言伝を頼む事にした。

「忍術学園、だったよね・・・」
知り合い達の顔を思い出し彼は体を自らの黒い羽で覆った。
現れた四枚翼の鴉は村人の安全をちらりと確認してから、彼方へと飛び去った。


「兵助、俺らとんでもないことに巻き込まれてるかもよ・・・」
呟いた言葉は風に乗って消えていった。

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あきゅろす。
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