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妖怪パロ あやかしあやし
弐拾玖-蝶、合の子と出会う-

竹谷八左ヱ門は足取りがふらついている新入生に出会った。



「っ………」


どうしたんだ?あの子。

足取りが大分ふらついていて、壁に手をついている。


「大丈夫だよ、ジュンコ……まだ……うっ」
「おいっ!」
八左ヱ門は倒れる少年に駆け寄った。

同じ穴の貉は同じ貉を呼ぶ。

妖怪の血はよびあう。


「!?」
富に血を主食とする蝶の鼻は良い。


しかし、八左ヱ門の鼻でも彼を妖怪か人間かを判別できなかった。

いやいや、今彼を判別することより、彼自身を助ける事が最重要だと首を降って変な考えを捨てた。


「大丈夫か?どうしたんだ」

八左ヱ門が聞けば、射抜かれるような視線。
ふと追えばそれは彼の首元にいる蛇だった。

その蛇からは確かに血の匂いがしてこちらは確かに妖怪だと思われた。

「……ジュンコ」
少年が小さく呟けば、蛇は仕方なしという風にそっぽを向いた。

「ごめんなさい、先輩。大丈夫です」
少年は眉を下げたまま笑うと膝に手を付きよろよろと立ち上がる。

立ち上がって、一歩踏み出そうと言うとき、膝に力が入らなかった。

まぁ即ち、また倒れそうになったのだ。
八左ヱ門がそれを見逃す筈もなく、彼は八左ヱ門の腕に抱えられた。


この貧血に近い状態を八左ヱ門は良く知っている。
失血である。
何度か彼自身が体感した事がある状態だ、間違いではあるまい。


「すみません、ありがとうございます」
「おう、こいつの言う通りだぜ。無理すんな」
「へ?」
八左ヱ門は慌てて口をふさいだ。
先程、首にいる蛇が話したのだ。
その言葉に対して失血の確信を得て、尚且同意をしてしまったのだが、彼には聞こえていないかもしれないのだ。


妙な沈黙が続いた。


「あの、先輩」
「お、おぅ」



「ジュンコの声、聞こえてるんですか?」
少年の言葉に、ジュンコと呼ばれた赤い蛇が頭を上げた。

八左ヱ門は黙ったままだった。
が。

ジュンコがチロチロと舌を出せば、少年は確信を持って問いただした。

「やっぱり。聞こえてるんですね。貴方もあやか…え?何、ジュンコ。偉い人なの?そうは見えないけど……うん。うん、そっか、この人が母さんの言ってた人」
少年とジュンコは二人で話を進めていく。


「なんだよ、バレてんのか」
はぁ、と彼に対して警戒心を強めた自分が馬鹿みたいだ。

偉い人には見えないと言われてしまったが、まぁ自分でもそう思うし、実際そこまで権力があるわけでもないのでスルーする事にした。


「お前、名前は?俺は八左ヱ門。一応この姿では竹谷八左ヱ門と名乗ってる」

お前とそこの蛇の推測通り、蝶だよ。
そういったら、なんだか肩の荷が下がったような気がした。


「僕は、伊賀崎孫兵といいます。こっちは妹のジュンコ」
「妹?」

孫兵がジュンコ、まぁつまりは蛇を正しく妹と言うのにたいし、八左ヱ門は驚きを隠せない。

「あぁ、妹見たいに可愛がってるってことだな!」
「いや、違います。僕とジュンコはきちんと同じ母親の腹から出てきた兄妹です」

八左ヱ門はこの言葉に凍りついた。

訳がわからない。

人間と蛇が同じ母親から出てくるものか。

混乱している八左ヱ門に孫兵は笑って答えを出した。

「ふふっ、僕とジュンコは人間の父親と、白蛇である母親との間を産まれた合の子です」
つまり、所謂半妖ってやつですね。と笑う。


「ジュンコの方は妖怪の血が多いんですが、僕は…」
孫兵はそういって自らの掌をみやった。

彼にはどうやら父の血が多く流れているのだろう。

八左ヱ門は彼を妖怪か人間か判別出来なかったのは自らの鼻が悪くなった訳ではなかったのだと安心した。

既に彼の体内の血自体が混ざりあっているのだ、妖怪でも人間でもないのだがら、どちらかにくくれる筈もなかったのだ。


そこまでいってから、孫兵は大きく肩で息を吸った。


「失血だな。ちょっと待ってくれ」
八左ヱ門はごそごそと懐を漁る。

「すみません、人前でネズミやウサギを採って血を啜るのは出来なかったので……」

そりゃあそうである。
そんな事をすれば、ただの十の人間はひっくり帰るに決まっている。


「あった…うん、十分あるな。孫兵、これ舐めろ」

八左ヱ門は喜八郎から貰った血玉を孫兵に見せる。

すると彼の瞳は金色に煌めき、血玉を八左ヱ門の手から奪い口に含んだ。
赤い液体は口に鉄の味を拡げて体に入っていく。

「これで平気だろ?」
八左ヱ門の言葉に金色の瞳を伏せた孫兵はこくりと頷いた。

そのまま八左ヱ門は袋こど血玉を孫兵に渡した。


「ここに幾つか入ってる。まだ十分足りると思うけど、足りなくなったら俺の所に来てくれたら渡すよ」

八左ヱ門は孫兵をみて、どうにも放って置けなかったのだ。

それに蛇や白蛇は水、即ち蝶である自分と同じ湖を守護する眷族。
眷族は皆同じ家族だと考えている八左ヱ門にとっては孫兵もジュンコも弟の様に思えたのだった。




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