妖怪パロ あやかしあやし 60000HIT 華月様リク 流星が叶えた願い事 本編終了後設定の会計委員会。 なので団蔵、左吉がいて、普通に妖怪のみんなと仲良くしています。 それでもよろしければ、いけどん! ↓ ******* 「たるんどるっ!」 今日も今日とて貫徹三日目。 目の下にある隈をいつもより酷くして会計委員会委員長は愛用の算盤を手に怒鳴り散らした。 「すみませんっ!」 仁王立ちする委員長の前で土下座をして謝っているのは会計委員会の一年生二人だった。 実は片方は妖怪で、もう片方は妖怪の呪がかかってしまっている人間だ。 妖怪の方は白児という妖怪で人間に掛っている呪は犬神の呪だ。 犬神の子供的存在ともいえる白児と犬神の呪をもつ犬神筋の少年は目の前の委員長にふさわしいともいえた。 なにせこの委員長、漆黒の体を持つ犬神なのだから。 袴の隙間から覗いた黒い尾でいらついた様に空気を叩く。 それだけで、小さな風が怒ったが計算中の予算を飛ばすような事はしない。 なぜなら会計委員長だから、としか言いようがないだろう。 一年生二人が予算決算の仕方を忘れてしまったと申し出てきたので文次郎は怒ったのだ。 委員会の予算決算は一月に一度。 そして最後にいつも先輩たちの手をかりながらやっていたのだ。 しかも前月のは休みで決算がなかったし、その前は一年生たちは、は組の騒動に巻き込まれて決算が出来なかった。 白痴とは組にとっては、それは忘れるには申し分ない時間であった。 貫徹のしすぎなのかいつもより怒りっぽい委員長、潮江文次郎からの逆鱗を避けようと二人は委員会の時だけ頼りになる先輩を見た。 一年生、左吉と団蔵が頼ったのは四年生で文次郎に唯一意見をいえる三木ヱ門であったが、彼はお気に入りの髪を振り乱しながら掌を額に乗せていた。 「先輩ー、私ちょっと厠にいってきまーす」 「おー」 となりで算盤を弾いていた左門が立ち上がる。 厠にいくといった左門をいつもの三木ヱ門ならばすぐに止めるはずだった。 しかし、その反応すら遅くなっているのか、おう、とだけ呟く。 それからたっぷりみっつ数えてから。 「ちょ、待て左門!厠はそっちじゃ・・・ぬぉぉっ・・・・っ!!!」 迷子になる直前の左門を留めようとするものの、長時間正座していたせいで足がしびれて動けなくなってしまったようだ。 三木ヱ門が波山という鳥の妖怪の生まれ変わりだ。 その体もまた妖怪に近しい。 鳥の細い足で長時間の正座はきつかったようであった。 迷子になっているであろう会計室から姿を消した左門。 かたや足がしびれてどこのお姫様だという姿になっている三木ヱ門。 一年生の二人が助ける求める人はどうやら何処にもいないようであった。 そして委員長のどなり声が響き渡った。 「全員、たるんどるーー!!!」 音、というものは空気を振動させることによってできている。 そして空気を動かして出来るものは風なのだ。 鋭い風が鳴くのも、息を吸うときも吐くときにも音がでるのはこの為だ。 そして犬神をはじめとする木属性の妖怪たちはこの風を使う。 三年生の鵺は攻撃力は高くないものの、誰よりも疾く吹く風を使う疾風。 五年生の風狸は防御力と応用力に長ける誰にも捕えられぬ風を使う舞風。 そして六年生の犬神は。 攻撃力に無駄に長けている全てを破壊する誰も寄せ付けない強さの神風。 神風が怒りを持って叫んだ言葉は空気を震わせ、つまりは。 「うっぎゃーーーーー!!!」 犬神の絶叫は声の大砲となり、委員を全員外へ吹き飛ばす。 その風には会計室にいた団蔵、左吉、三木ヱ門は勿論、厠に行こうとして会計室に舞い戻って来た左門も一緒だった。 思ったよりその風は本気だったらしくて、真下に学園の塀が見えた。 裏裏山方面にかっ飛ばされている状況を見て、先ほどまで役立たずだった先輩たちは、しっかりと先輩をやって見せた。 三木ヱ門と左門は互いを見ると頷きあい、互いに力を解放させる。 彼らの纏っている装束は妖力の塊だ。 力を解放すればそれは自然と変わる。 しかしそれは全力で解放を行ったときだけだ。 通常力を押えている状態から、自分の武器だけを元に戻す。 力になれればこんな事だって可能なのだ。 間違いなく一ニ年前では三木ヱ門も左門もこんな事出来なかったのだが。 三木ヱ門がからんだ騒動のなかで、そして学園全体をまきこんだ騒動で間違いなく彼らは強くなっていた。 「左吉っ!」 「神崎せんぱ、いっ!」 未だ井桁模様の佐吉を左門が掴む。 片手で襟首をひっつかみ、もう片方で自分の獲物を取り出した。 「団蔵!」 「せ、せんぱい!」 三木ヱ門の肩には既に畢方が飛んでおり、団蔵に声を掛けた時には鳥は姿は変えていた。 所為格には三木ヱ門の体と同化をし、妖怪化したのだけれど。 伸びた明るい髪の先は鳥の尾羽根に似ている。 彼らの体が落ちる早さよりも早く、その髪は団蔵に近づく。 このままだと確実に死んでしまう団蔵は必死に彼の髪をつかんだ。 人間の団蔵にとって、明らかに以上であったけれど、恐怖は感じなかった。 この異常でヒトデナシである先輩たちに何度も幾度も命を助けてもらったのだから。 「目、閉じてろ!」 その言葉に左吉はぎゅうと目をつむり、同時に左門は彼を持ち上げると改めて腰に手をまわして自分の胸に収めた。 そして左門は森の中に突っ込む。 ばりばりと木の枝を折る音がしたが、目を瞑っているので左吉にはよく分からない。 とりあえず、ひどい音がするだけで、自分は何も痛くないという事に気がついた。 その時には既に落下の感覚も木を折る音も止んでいた。 太い枝の間に獲物である櫂を渡し、左門は左吉を抱えながらぶら下がっていた。 「なにやってんだ、お前」 「誰かさんみたいに私は飛べないんですー」 団蔵を両手で抱きかかえながらゆっくりと降りてくる三木ヱ門に左門は唇を尖らせた。 左門は左吉を持ったまま、櫂を消して太い枝があった場所から地面に着地する。 それからゆっくりと落下して、地面に足をつけた三木ヱ門をみて言い放った。 「まあ誰かさんみたいに人一人乗せて飛べなかったり、人一人抱えて飛び下りたり出来ないほど非力ではないですけども」 「この・・・」 一体どこで覚えてきたのか、左門はかかか、と笑う。 そんな後輩を生意気だと三木ヱ門は首に腕を掛けて締め上げる。 「ごらぁ、左門のくせに生意気なんだよっ!何処で覚えてきたっ!」 「こないだ孫兵が先輩の事そう言ってたからですーぐえー」 力をあんまり掛けていないのか、左門は目を閉じて舌を出し悲鳴を上げるものの本気で苦しそうではなかった。 「伊賀崎ぃぃ・・・・」 「ぎぁっ・・・先輩、マジしまってるしまってる!!」 三木ヱ門の腕を叩き、離せと懇願した。 そう言えばやはり三木ヱ門は左門にはそこまで怒っていなかったのか直に悪いと腕を離した。 三木ヱ門から解放された左門を心配そうに一年生が見つめてくる。 そんな一年生にも左門は先輩であった。 「先輩の前で孫兵の名前出さなきゃよかった」 本気で仲悪いんだもんな、あの二人、と左門は大げさに溜息をついた。 一年生に自分は大丈夫だと思わせるためにだ。 その意思をどうやら一年生はくんでくれたらしい。 まあきっと左門と三木ヱ門の喧嘩を見慣れているからでもあるだろう。 いつものこと、と位置づける事にしたのだ。 「にしても、ここはどこなんでしょう?」 左吉が冷静さを取り戻し、左門によって乱された袷を戻した。 三木ヱ門も左門も周囲を見渡してみる。 それからこの中で一番色々な場所に行っている一年は組の団蔵を見た。 しかし団蔵も首を横に動かした。 どうやら全員しらない場所に飛んできてしまったらしい。 「方角的には裏裏山がある位置なんだと思うんだが」 飛ばされている最中に裏裏山の真下を通ったから、と三木ヱ門は呟いた。 「じゃあ、学園は巽の方角になるから、こっちだな!」 「バカタレィ」 「そうですよ、先輩!今僕たちがどの方角に向かっているかも分からないのに!」 「左吉、だから左門先輩は方向音痴なんだと思う」 「う?」 自信満々に帰る方角を指し示した左門には委員全員からの厳しい御意見が飛んだ。 ま、帰る方角は会っているんだけどな。方角自体は。 そういった三木ヱ門は空を見上げた。 空の色は既に橙色だ。 「そうだ!太陽の位置で方角分かりましたよね!」 「太陽?どこにあるんだよ」 左吉が方角を知る術として太陽の方向を指し示す。 それに団蔵が三木ヱ門と同じように空をみて、呟いた。 空は橙一色で太陽の姿は見えない。 周囲の高い木々に遮られてしまっているのだ。 その木々たちを見て三木ヱ門は後輩たちに提案した。 今ここでの最上級生は四年生の三木ヱ門であって、今の状態を打開できるのも自分だろうと踏んだのだ。 「今のうちに少し歩いて開けた場所に移動しよう」 空の色から今は日暮れだという事が分かる。 そうすればしばらくしないうちに空は暗くなるだろう。 今は狭い空ももう少し開けた場所に出れば星が良く見えるようになるだろう。 そうすれば方角は確実に分かる。 もちろん一年生を連れての夜道は危険だから、出来れば一どこかで過ごして明日の明朝には戻りたい。 学園に入る時の小松田さんはどうごまかすべきかとまで考えて三木ヱ門は頭を振った。 今考えるべきことではなかったからだ。 「ほらお前ら、移動するぞ」 「はい!」 三木ヱ門の言葉に大きく頷いたのは一年生二人で、その二人はがっちりと左門の両腕を取っていた。 左門も一応迷子、という自覚はあるので腕をとる二人の手を掴んで手を繋ぐ形をとった。 左門を迷子にさせるまいとする一年二人を微笑ましく見つめて三木ヱ門は先頭に立って歩きだした。 どうやら自分たちは幸運だったようだ。 山の頂上だと思われる開けた場所に橙が墨色になる前に辿りつく事ができた。 近くには大木があって、この洞の中なら雨風はしのげるだろう。 四人で入るには少し狭いが、枝の茂り方から雨はしのげると判断した。 左吉と団蔵が持ってきてくれた小枝と葉を使って火をつけた。 三木ヱ門は自分の炎を使う事なく、懐にあった火種で火をつけた。 こういう所を見ると、三木ヱ門は自分と同じじゃないかという錯覚に陥る。 その錯覚は、間違いなく錯覚なんだという認識をもって団蔵は三木ヱ門と自分との差を考えてしまう。 馬鹿だアホだと言われ続けているは組の団蔵でも分かる。 三木ヱ門達と自分は違うのだと。 燃える焔を見ていると考えてしまう。 「僕が人間だから、潮江先輩僕の事嫌いになったのかな・・・」 団蔵からまさかそんな言葉が出てくるとは思わなくて、全員口を止めた。 それからげらげらと笑いだした。 「な、なんで!嗤う事ないじゃないですかぁ!」 「あはははっ!団蔵、やっぱお前馬鹿なんだな」 「本当、如何してそんな事考えたんだ?めっずらしい!」 先輩二人に大爆笑されて団蔵は口を荒げるが二人は笑う事を止めなかった。 「だって、僕だけ人間、ですし。それにこんな事初めてだから」 団蔵の言葉が小さくなる。 そう、初めてだったのだ。 文次郎がこうやって自分たちだけを放りだす、という事は。 いつも彼は自分たちを率先してくれていたから。 例えそれがどんなに辛い特訓であろうとも、一緒に文次郎もやってくれたから出来たのだ。 それなのに、今はその文次郎がいない。 棄てられたのでは、と嫌われたのではと思うぐらいには彼は一年生と一緒にいたのだった。 「大丈夫。お前を嫌ってなんかいないよ」 三木ヱ門は枝を見上げると、小さく呟く。 「言うなって言われてたけど、ま、居ない方が悪いですよね?」 「先輩は今日イライラしてたんだ」 三木ヱ門はそういって呟いた。 あの騒動が終わっても妖怪が居なくなったわけではない。 それにアレで視える人間が増えてしまったから、見回りを増やしているのだと。 その見回りを誰よりも率先してやっているのが文次郎なのだと。 「修行」という態の良い言い訳を持ち上げて彼は学園の見回りをしているのだ。 とくに一年生長屋、一年は組の長屋を中心に、だ。 「それで疲れてる上に自分が守っているお前らが失敗した」 「自分はもういれない。だから独りで強くなれるようになってほしい。でもお前らは僕らを頼っただろう?」 だから怒ったんだ、もちろん堪忍袋の緒もキレやすかったんだろうけども、と。 三木ヱ門は笑顔を絶やさずに言い切った。 団蔵も左吉もそこまで聞いてしまえば、自分たちも悪かったのだと思いしる。 文次郎はあせっていたのだ。 自分はもう学園にいる理由がなくて、一度学園を抜ければ一族の仕事が待っている。 抜け出して学園のあるあちら側にいく事は少なくなるだろう。 年数を重ねれば重ねるほど、此処にいる妖怪の数は減る。 でもきっと、此処に「視える」人がおり、「犬神」が数年とどまった場所を妖怪は認知するだろう。 犬神の能力である試練が団蔵らを楽にはしてくれないだろう。 離れても、きっと文次郎は団蔵たち後輩を簡単に切り捨てることなど出来ない。 冷静そうにみえて誰よりも情にあついのだ。六年い組の二人は。 だから余計文次郎はあせったのだ。 団蔵らが強くならなければ、自分が遺す試練に飲まれてしまうのではないかと。 「あっ!」 そんな時ずっと黙っていた左門が大きな声をあげた。 どうしたのだ、と左門の顔が向いている空に視線を向ければ、全員が口を開けた。 いくえもの星が光を纏って流れ落ちていた。 その美しすぎる光景にしばらく四人でそれを見ていたが、団蔵が急に手を打ち鳴らした。 目を閉じて、大きな声を出した。 「今度は、潮江先輩と見れますようにっ!!」 「団蔵、それなんだよ」 「しんべヱから聞い事があったの思い出したんだ!流れ星に願いを込めると叶うんだってさ!」 左吉に口早に伝えると、団蔵はそうだった、と思いだしたように再び願いを口にだした。 「あと、は組のみんなとも!あ、父ちゃんと清八もっ!あと、あと!い組のやつらと、ろ組と!先輩も!先生も!!」 「あー、もうっ!みんなで!!みんなで、今度は流れ星が見れますようにっ!」 この綺麗な景色をみんなで見たいと、言ってくれた団蔵にヒトデナシは心が温かくなった。 は組にも、い組にも、ろ組にも、先輩にも、自分と違うヒトデナシがいるだろうに。 それでも、「みんな」で見たいと団蔵はいったのだ。 この綺麗な景色を「みんな」で見たい、と願ったのだ。 当たり前のようにヒトデナシが人間のように流れ星を綺麗だと感じる心があると信じていて。 なによりも、団蔵のなかにいる「みんな」になれている事がうれしかったのだ。 その喜びを体で表した左門は団蔵に抱きつきに行っていた。 そして三木ヱ門は団蔵に言う。 「団蔵」 「はい?」 「一個目の願い事は叶ってるよ」 そういって団蔵は、三木ヱ門の指が差す通り木を見上げていく。 幹を伝って、深い緑と暗い闇の間。 謝って飛ばしてしまった彼らが心配で、仕事をほったらかし、探しに来ていた犬神の姿があった。 それを確認した団蔵は、満面の笑みで手を大きく振りかざした。 「しーおーえーせんぱーい!!」 降りてくるのが照れくさいのか、文次郎はそっぽを向いて頬を掻いた。 そんな文次郎に団蔵は目もくれない。 これは文次郎が照れている時の仕草なのだ。 他の級友ならいざしらず、一年生のなかでも文次郎にかなり近い自分が不愉快になる事はない。 「僕、潮江先輩みたいに強くなります!絶対強くなりますからー!」 「・・・!!ぼ、僕もです!」 団蔵が文次郎に向かってそう叫び、それを聞いた左吉も恥を忘れてそう叫んだ。 「じゃあ私は潮江先輩を倒す位に強くなります!」 「僕も先輩尻に引くくらいに強くなりますねー」 左門といつの間にか木の下から出ていたも三木ヱ門も混じって文次郎を見上げていた。 「ばかたれ」 降りてきた文次郎の顔が耳まで真っ赤だったことは、言うまでもない。 ************************* 華月さま、リク消化が悪くなって申し訳ありませんでしたぁああ! 仲の良い会計ということだったのですが、なんていうか会計の日常?みたいになりました。 なんだかんだでいつも隣にいるよ、な左吉と団蔵 年が近く何でも言い合える男兄弟のような左門と三木、そしてみんなのお父さんなもんじを目指しましたが、こんな感じで宜しかったでしょうか? よろしければお納めくださいませ! キリバンリクエスト、ありがとうございました! 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