[携帯モード] [URL送信]
木苺の茂みを蹴散らして


「チッ……キリが無いな、うん!」


デイダラが飛ばした粘土の鳥が、襲い来る蛇の大群を吹き飛ばした。
名前が「連れて行かれた」瞬間に再び現れた蛇たちは数を増し、更に今まで恐らく大蛇丸の命令で身を潜めていたのであろう大蛇丸の部下たちも、戦闘に加わりつつあった。


「どいつもこいつも雑魚ばっかりで手応えはねーし、めんどくせーなぁ角都ゥ!いつもの大技で、このアジト全部ぶっ壊そうぜ!」

「ちょっ飛段さん!名前さん見失っちゃったのにそれはマズイですって!巻き込んじゃったらどうすんですか!」

不満を漏らす飛段を制したのは、意外にもトビだった。
大鎌を振りかぶった飛段の前に出て両手をぱたぱたと広げる。飛段はお構いなしに鎌をぶん投げるが、それはトビをすり抜けた向こう側の囚人たちを蹴散らした。


「近くにゼツさんが待機してると思うんで、俺ちょっとゼツさんと一緒に、名前さん探して来ますね!めっちゃ急ぐんで!」

ちょっと待ってて下さいねー!と言い残し、トビは姿を消した。


トビが消えたことを確認し、イタチは人知れず、その双眸を不快げに歪める。

(あの男と名前は、出来る限り接触させたくはなかったが……)

苦々しくは思うが、名前は既にイタチの気配察知の範囲外へと消えていた。トビとゼツに任せるしかない。



ひとまず目の前の敵を片付けながら、イタチは思考を巡らせる。

名前が吸い込まれた空間の歪みは、時空間忍術のそれそのものだった。
恐らくトビもそれを見て危機感を覚え、自ら名前を確保に走ったのだろう。


資料上では、時空間忍術は未完成とされていた。しかし、万が一完成していたら?その鍵を握る名前が、永久的に大蛇丸の手に渡ってしまったら?

大蛇丸は暁にとってもイタチにとっても、最優先すべき抹殺対象となるだろう。今後、本格的に尾獣集めを始めなければならない時期――つまり、イタチも暁の動向に気を配らなくてはならない時期に、脅威を増やすような真似は避けたい。


名前を取り返す理由は、それだけだ。


(ほかの理由など、必要ない)


それは自分への戒めだった。
名前が時空間の歪みに消えるとき、救いを求めるように伸ばされたその手に、重なったのは過去の情景だった。


一族を終わらせたあの夜。助けてくれ、殺さないでくれと伸ばされた手をイタチは尽く無視し、ただ為すべきことを為した。

それはこれからも変わらない。
守りたいものを守るために広げた手のひらから、こぼれ落ちていく全てを見捨てる覚悟。いずれ自分の命すら、そこからこぼれ落とす覚悟。

その覚悟を持つ以上、誰かが伸ばした手を掴むのは、残酷な行為でしかない。


(……俺には、あの手を掴む資格はない)


火遁で焼き払った煤けた視界に金色が踊り、イタチの視線がそちらへ泳ぐ。満月の光を受けて煌めいたその微かな反射に、イタチは目を細めた。




「随分手間取ってるみたいだね……数ガ多イカラナ」

敵影もかなり少なくなった頃、おびただしい数の蛇の死体をかき分けるようにして、ゼツが地面から現れる。

「名前の居場所、見付けたよ……トビガ先ニ行ッテイルガ、ドウセ援軍ガ必要ダロウ……」

「よし!案内しろゼツ、うん!」

デイダラ、そして角都と飛段がゼツの後を追う。
イタチは少し距離を取り周囲を観察しながら、一行に続いた。




[*前へ][次へ#]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!