獄焔CHaiN
オフの日・IN掃除係
カタカタ、カタタタ
指の長い手が、キーボードを滑る。
片方はそんな風にせわしなく動いているが、一方でもう片方は頬杖をのんびり。時折、黒縁眼鏡を押し上げる。
トクサはしどけなく寝転んで、趣味のネットゲームを黙々とプレイしていた。
畳敷きの小さな部屋、ラフな格好のエルフの側には漫画やらゲームやらが散らかっていて、更にはやけにデカい猫……いや、ライオン、人の形をしたライオンが仰向けにごろごろしていた。
「……」
見上げるように、トクサへ目をやるツルバミ。暇だ。物凄く暇だった。だがしかし、彼はパソコンで遊んでいる。
「にゃぉぅ」
咽を鳴らしてみた。甘えるように、ごろごろと。頬杖の手を入れ替えただけだった。
「なぅー」
ちょいちょい、と太股を軽く猫パンチ、猫パンチ。げしっ、と蹴られた。額が痛い。痛い額。
のたうち回って、暫く。
ちらりと盗み見たエルフは、くぁーと欠伸を一つ。側にあったコーラを二、三口。
「……………にゃぅー…」
つまんない、と大きな猫はちょこんとお山座りをして悲しげに鳴いた。
すると、エルフが何やら手を伸ばし、或る物を手に取った。
丸い……なんてことない野球ボール。
びゅんっ、
と、それが窓の外へ投げられたのは直後の事で。
獅子はそれを追って猛然と窓から跳びだしていった。
「……あ、此処…四階だったな。まぁ、ツルバミなら大丈夫か」
コーラを、飲み干す。
外でぼけーっとしていたアサギによって、打ち返された野球ボールとツルバミが窓をぶち破って戻ってきたのは、その五秒後。
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