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バスルームで…

自分と同じ性なのに、僕とは全く違う体が凄く目を引いて、とても美しく感じた。

シャワーを頭から浴びる兄の姿から視線をそらす事が出来ない。

あまりにも僕が見続けていた為に視線に気付いた兄はシャワーコックを捻ってお湯を止めると、濡れた髪をかき上げながら僕を見た。


「どうした莉央?」

「いっ、いいぇ。何でも有りません!」

明らかにわざとらしく視線をそらしてしまった。


兄はクスクスと小さく笑い僕の方へゆっくりと歩いてくると、足先から湯船に入った。

兄の体積でお湯が溢れこぼれた。


我が家の湯船は大きく作られているが流石に大人の男二人が入れば狭く感じても致し方ない。

湯船は手足を伸ばしてゆっくりと入りたいモノ…、だから僕は兄に気を使って先に出ようとしたのだが、立ち上がろうとした所で兄に腕を掴まれ体制を崩してしまった。


ジャブンッ!!と、水音を立てて僕は兄の体の上に座ってしまった。

「す、すみません兄さん!!」

背後にいる兄に慌てて謝り再び立ち上がろうとしたのだが、兄は後から僕の体を抱きしめると動けなくした。

「兄さん?」

「ちゃんとお湯につかって体の芯まで温めないと後で湯ざめする。私が良いと言うまで、もう少し湯船につかりなさい」

「…わかりました」

兄が言うのなら間違いない。


確かに、湯ざめの後は風邪をひきやすいからな。

さすが兄さん、僕の健康の事まで考えてくれるなんて本当に優しくて素晴らしい御人だ。


僕は素直に兄の上に居続け、兄の胸板を背もたれにして体を預けた。

兄は僕の腰に腕をまわして、僕の肩の上に顎を乗せた。

少し横を見れば兄の美しい顔が間近にある。

兄はずっと僕の顔を見ている様で僕が横を見ると、目と目が重なる。


こんな格好で、こんな体制で…こんな近くで見られている事に対して少し恥ずかしさを感じた僕は兄から目を反らし正面を向いた。


星の数ほどいる人間の中で僕が唯一存在を認めている、尊敬している兄。

血の通った兄弟で、同性なのに何故か僕は裸で兄に抱きしめられてドキドキしている。


どうしよう…。


いったい僕は何を考えているのだ!

どうしてしまったのだ僕は!!

さっき兄に体を触られた時からずっと兄の全てが気になって仕方が無く、体が熱くて心臓がドキドキするのだ。


とにかく兄に対して僕の奇妙な変化を悟られてはいけない!知られてしまっては変に思われる!隠さなきゃ!!…本能的にそう思ったのだ。


それなのに勘の鋭い兄は僕の変化などお見通しの様で…


「莉央、顔が赤いけど、どうした?」

と、少し笑いを含んだ声で問われて僕はさらに顔を真っ赤にした。



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