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僕は少し困ってしまったが、満面の笑みを兄に向けた。

歩いているうちに僕の部屋の前に来たので兄とは扉の前で別れて僕は自室に入った。

制服のままだったから私服に着替え、その後ダイニングに向かい、兄と夕食を済ませ、再び部屋へ戻る際、兄には後で部屋へ伺う事を告げた。

そして自室に戻った僕は寝巻をもって浴室へと向かった。






頭からシャワーを浴びながら目前にある鏡に映った自分自身を見て、やっぱり僕は美しいと思った。

水も滴る何とやらってやつだ。

絹のような滑らかで白い肌の上を水玉が走りぬける様は言葉に表せないほど綺麗で、裸体の僕はまさに芸術品だと自負する。

僕は美の女神であるヴィーナスにだって負ける気がしない!

やはり一般市民は僕を崇めるべきだ。

家族以外の人間は皆、僕の美しさに心を奪われ、下僕と成り下れば良いと思う。


何故なら僕は…美しい!!



そう当然の事を思いながら身体を洗っていると…


−コンコン


「!?」

ノックする音が聞こえたので後ろを振り向けば…

「にっ、兄さんッ!!!?」

兄が扉をあけていた。
しかも、何故か兄は服を着ていない!!
一応、腰にタオルは巻いていたが...。

突然の兄の登場に驚きつつも僕はとっさに身を屈めて身体を隠した。

すると兄は浴室に入ってくると僕に向かって

「やぁ、たまには昔の様に一緒に風呂に入ろう」

と、言って座って身を屈めている僕の背後まで歩いてきた。

僕はシャワーの温度を高温にして勢いよく、お湯をタイルに出して湯気を立たせた。

すると浴室は蒸気で白く煙り、視界を少し遮ってくれた。


子供の頃は一緒に入っていたが、さすがに今となっては恥ずかしい。

同じ男同士でも僕は普段、人に身体を見られる事はしないのだ。

体育の着替えの時だって特別扱いされている僕は一人個室で着替えているくらいだ。

それに比べると、風呂なんて全裸じゃないか!

兄弟とは言え、流石に恥ずかしいのだ。


「に、兄さん…急にどうしたの?」

「何が?」

「何がって…、風呂は一人で入るものだと思います」

「そんな事はない。風呂は二人で入るものさ!背中を洗ってくれる人がいると助かるだろう?…ただし莉央は私以外の人間と一緒に入ったらダメだ」

兄は喋りながら桶にフレグランスソープを入れて泡立てていた。

「莉央、背中を洗ってやる」

肌理の細かい泡を持った兄が僕の背中に触れた。

「兄さん…何故、スポンジを使わないのですか?」

「体を洗うスポンジを使って莉央の美しい肌に傷がついては大変だ。私の手で丁寧に洗うのが一番良いだろう」

兄は僕の背中を撫で回すように洗っていた。

「莉央、成長したな。昔はあんなに小さかったのに。華奢な体つきは変わっていないが…、私の知らないうちに莉央はこんなに成長していたのだな」

「子供の時と比べれば、そりゃあ…成長してなくちゃ変ですよ」

僕の背後で、背中を洗いながらシミジミと言う兄が可笑しくてクスクスと笑った。

背後に居る兄の顔を見れば、兄は険しい顔をしていた。

「兄さん?」

「眼鏡が無いから莉央の成長がハッキリと見えないのが残念だ」

いつも眼鏡をかけている兄にとって今の視界はボンヤリとしているのか目を凝らしているようだった。

「見なくて結構です」

「そんな事はない。可愛い弟の成長を見たいと思うのは兄にとって当然だろ?…それが見れないのは非情に残念だよ。こうなったら感触で成長を確かめてみるか...」

すると急に兄の長い腕が僕の前に回ってきて、泡だらけの手で胸を触られた。

「兄さんッ!!?」



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