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「ねぇ、雅人」

道を歩きながら龍一はゆっくりと俺の名を呼んだ。

「何?」

歩きながら、俺は龍一を見ることも無く進行方向に顔を向けて短く答える。

「・・・聞きたい事があるんだ」

「何?」


「もしかして、雅人・・・・好きな人が出来た?」



「え?」

俺は足を止めて龍一を見上げた。

龍一は無表情で俺を真っ直ぐ見ている。

俺は何て答えるべきか迷っていた。

もし、これで俺が正直に答えると龍一はまた俺の想い人にヒドイ事をするかもしれない。
愛する人が俺のせいで傷つけられるなんて、二度とゴメンだ・・・淳に何かあったら俺は今度こそ立ち直れないかもしれない。

冷たい汗が背筋を流れ、急に喉が渇きだした。

「ねぇ、雅人。正直に答えてよ」

「・・・い、いなぃょ」

「嘘」

「嘘なんかじゃ・・・」

「嘘。ねぇ雅人、どうして嘘つくの?雅人の事をこの世界で一番良く知っている俺が、雅人の事を一番見ている俺が気付かないとでも思う?」

「りゅういち・・」

「そんなに好きなんだ?・・俺に嘘を言うくらいに・・・そいつが好きなんだ」

龍一は消え入りそうなくらい小さな声を震わせて俺を見た。

俺は何も言えずにただ黙って龍一を見上げる事しかできない

「・・・ぃやだ」

龍一がまた小さくぼやく

「龍一?」
俺が訝しげに龍一を伺ったら、力強く両肩を掴まれた。

「嫌だ!嫌だ!!嫌だよ雅人!どうしてだよ雅人!俺以外の特別な人間なんて作らないでよ!こんなに愛しているのにどうして雅人は解ってくれないの?俺だけを見てよ!雅人ッ!!」

肩を掴まれた俺は肩をガクガクと揺すぶられる

「痛い!龍一おちつけ!」

「落ち着いていられる訳ないだろ?!」

今度は強く抱きしめられた。
龍一の腕と胸板によって潰されてしまうんじゃないかって位に苦しさを伴うほど強く抱きしめられた。

「龍一・・苦しい」

「俺も心が苦しいよ雅人・・・本当はこんな事したく無かったけど・・・」


-カチャ


「えっ?」

一瞬何をされたか理解出来なかったが・・・俺の両腕が後ろで拘束された。
手を動かす度にカチャカチャと音がする。

「えッ!?・・・手錠?どういうことだよ龍一!今すぐコレ外せッ!」

拘束された腕をカチャカチャと鳴らしながら俺は龍一を見上げたが、龍一の冷たい表情に一気に全身の血の気が引いた。

・・・怖い

俺の脳が危険だとサイレンを鳴らす

周りには誰もいない・・・

俺は大通りまで走って逃げようと思った矢先、龍一にまたしても抱きしめられ口付けをされた。

口をこじ開けられて無理やり舌が侵入してくる。

「んぇ・・ゃめ・・ぅッ・・りゅういち・・ぐ」

頭を掴まれたから龍一から顔を背けることすら出来ない

このまま龍一の舌を噛み切ってしまおう・・・そう思ったときだった。


-ゴクン


何ッ!?

今、何かを飲んでしまった・・・いや、飲まされた。

龍一が俺の唇から離れ、濡れて光る龍一の唇が横に伸びた。

不適な笑顔で俺を見る龍一

「な、何を飲ませた!?答えろ龍一ッ!!・・・りゅぅt」
俺が目の前の男に怒鳴りつけていると、急に視界が歪んだ。

遠くからピーーンと鳴っているような耳鳴りがして、足元がふらつく。

身体を動かそうと脳が信号を発しても反応が2、3テンポ遅れてしまう・・。

「雅人、愛してる」

龍一が何かを言っているようだが、水の中で喋っているみたいに音声がゴモっていて何を言っているのか全く理解出来なかった。

「りぅいちぃ・・」



俺は遠のく意識の中、最後に龍一を見た。


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