☆★STAR★☆
monster
どうしよう!
こんな体育着なんて着れないよ。
適当に言い訳をするしかない。
「そ、それが…、間違えて姉の体育着を持ってきちゃった」
心配性な慶斗にスポーツバックの中を見せる気にはなれなかった。
「歩美先輩の体操着?良いじゃん、ソレ着ろよ」
「いやいや、女子用だし、学校違うから体育着も違うし……それに」
「それに?」
ヤバイ!
信憑性のある嘘が思いつかない!
とにかく頭をフル稼動させて良い案を打ち出してみる事にした。
「えっと……そ、それに…俺が姉の服を勝手に着たのがバレたらボコボコにされる!」
「…まぁ、確かに歩美先輩の性格なら有り得るかもしれない。勝手に歩美先輩の所有物を使用して汚したりしたら怖いな。テレビではあんなに可愛らしいけど…、実際はモンスターだから恐ろしい!鬼姉をもった歩夢も大変だな」
慶斗は笑って言うが、冗談無しで姉は化け物だ。
一緒に暮らしている俺としてはあまり笑えない。
ってか、何て情けない嘘だろう。
しかし、プライドがエベレスト級に高いゴリラ姉のお陰で此の場は上手くかわす事が出来た。
有り難う、お姉様!
ありがとうモンスター!!
何の疑いも無く慶斗は笑っているので俺も一安心。
一応、出席扱いになる事を考えて俺は制服のまま授業に参加した。
もちろん見学オンリーで今日の競技、ドッジボールには参加出来ず、俺は体育館の壁に背を預けてボンヤリと、楽しそうに体育の授業に勤しむ皆を眺めていた。
体育着さえあれば俺も皆とドッジボールが出来たのになぁ…、いったい誰があんな嫌がらせをしたのだろうか皆目検討もつかない。
俺がモヤモヤした気持ちで楽しそうに体育の授業を受ける皆を見ていたら、敵の外野から飛んできた早いボールを内野にいた慶斗が軽々と奪い、ブンッ!と音を立てた剛速球を敵内野に向けて投げ放っていた。
慶斗の攻撃力有り過ぎなボールは敵内野の小峰に思いっ切り当たりボンッ!と音を響かせた。
ボールが当たった瞬間、小峰は思わず“ウッ!”と、可哀相だが間抜けな声を漏らしていた。
つか、マジで痛そうだなぁ…
俺、今日の体育は見学で良かったかも。
あんな凶器の様なボールが飛んで来たらキャッチするなんて絶対無理だし、確実に痛さを伴い魔球の餌食になる事だろう。
小峰の二の舞いだ。
俺とだいたい似た体格の小野沢は恐怖で顔が強張っていた。
慶斗同様にスポーツ万能な会田は敵チームの為か、ライバル心に火が付いた様で俄然やる気を出して、敵内野にいる慶斗目掛けて魔球を投げていた。
しかし慶斗は正面から、あの剛速球を軽々とキャッチしたのだった。
その瞬間、体育館内に野郎ばかりの低音だったが歓声がなり響いた。
慶斗はドヤ顔で俺の方へ振り替えると二カッ!と、白い歯を見せて爽やか笑った。
畜生…、カッコいいゼッ!
俺も笑顔になって慶斗に手を振った。
先程、慶斗の攻撃をまともに食らった小峰はダメージが大きかったのか、外野には参加せずに撤退して見学にまわるためココまで歩いてくると俺の横に座った。
ちなみに俺が座る場所は試合をしている所から少し離れているので危険な流れ球が飛んでくる確率は少ない。
「おつかれ小峰!大丈夫か?」
「佐川のボール、マジで怖いし痛いよ。あいつ化物か?」
「アハハ!人の親友に化物とは失敬な!…でも、俺もたまに思う。…ナイショだぞ?」
「うける!親友の真輝が思うなら佐川はモンスター決定だな」
小峰との会話で笑い合ってると、魔球の餌食になった小野沢と阿部も避難の為か、俺達の所へ来て会話に加わった。
「おっつー」
俺が声をかけると小野沢も阿部も疲れた表情で笑った。
「おつ!ってか佐川慶斗パネーよマジで」
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