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帝王=威厳×権力×枷


「歩夢先輩!」


急に声を掛けられてビックリしたが、俺は名を呼んだ浜田君を見た。


「加藤さんの言葉だけでは誤解したままになるので訂正しますが、加藤さんは、そんなに馬鹿じゃないですよ!……それと俺も」

最後の方はとても小さな声だったが、浜田君は真っ直ぐに俺を見ていた。

「加藤さんも俺も波工の編入試験くらいパス出来ます!!」

「え?そうなの??…でも、転校はしていないんだよね?」


「はい、転校はしたいけど…してません。俺達は今も黒高の生徒です。・・・加藤さんは、やっぱり凄い人なんです!!男気に溢れている、まさに漢なんです!!」

「…??」

話の流れがうまく掴めないぞ?

加藤が馬鹿じゃないと、男気がどう関係するのだ?

俺が疑問に思っていると浜田君は言葉を続けた。


「加藤さんが黒高の帝王、つまりトップって事はご存知ですよね?」

「う、うん。なんとなく…」

「加藤さんは黒高程の不良高校を纏めている凄いお人ですが、もし…硬派な加藤さんが黒高からいなくなったらどうなると思いますが?」

「加藤が黒高からいなくなったら…?」
具体的に何がどう変わるのか皆目検討もつかない俺は首をかしげた。


「加藤さんは黒高の法なんです。もし加藤さんが黒高からいなくなればTOPへの権力争いも当然起こりますが、それ以上に秩序はさらに乱れ禁忌を平気で破る者や、帝王がいなくなった隙を狙って他校からの襲撃が起こり全面戦争になりかねません」

「…せ、戦争ッ!!?」

「はい。黒高から加藤さんがいなくなると黒高はもちろん、学校地域の治安も乱れる事になります」

「治安?そんな所までッ!!?」

「オーバーだと思いますか?」

「……すこし」

「全然オーバーな話ではありません。加藤さんが黒高を統べる前、黒高の地区や学校がどんな所だったかご存知ですか?」

「……」
今でも黒高地区の駅や学校周辺は不良が多くて怖い所だと思うけど、俺はあえて首を横に振った。

「男子校である黒高生徒は平気で街から女子を攫って無法地帯である高校で監禁して強姦、複数人の男達でまわして孕ませ捨てる…、そんな悪行が頻繁に行われていた事はご存知ですか?」


俺は浜田君の非道な話に口元を押さえた。
「そんな酷い事が頻繁に…?!」

「辱められた女性こそ警察にいけません。…後でわかった事ですが、集団レイプした女性が万が一にでも警察に行かないように現場を写真や動画に収めて脅していた事も発覚しました」

「そんな…」

「酷いですよね?でも、これよりも酷い事が平気で行われている程に黒高は腐った不良の吹き溜まりでした。…でも、それを加藤さんが変えてくれました。」

「加藤が…?」

「はい。今まで人道を外れた行為を行っていた黒高の旧幹部とTOPを、加藤さんと慎吾さんが主になって潰しました。慎吾さんもそうとう強いですが、奴等もかなりの力量なので加藤さん無しでは実現出来なかったし、そうとうな修羅場でした」

「……」
浜田君の話に俺は唾を飲んだ。

「旧幹部を排除して加藤さんが黒高のトップになってからは条を作り、条に基くこれらの禁忌を犯した者は加藤さんや慎吾さん達の現黒高幹部が制裁に入る事により下種な犯罪が減っていきました。」

「すごい…」

「とは言っても加藤さん達は堅苦しい条で縛る事はしません。今でも割と自由で特に男同士の喧嘩には口を出さない・・・けど、女性や子供に被害が出た場合は加藤さんの指示により最強軍団の幹部が動くので、今まで最低行為を極めていた連中も怯えて非道な犯罪が減っていきました。つまり加藤さんの存在が俺達黒高にとって最大なんです」

「……」
アホなだけと思っていたが、加藤がこんなに凄い人で尊敬されるだけの事をしていたとは思わなかった。

「歩夢先輩!加藤さんも、…俺も本当は歩夢先輩のいる波工に通いたいってのが本音ですが、自分の欲や幸せだけじゃなくて、男としての筋を通す事も重要なので、俺達は黒高を安易には離れられません」

「…はまだ君」
浜田君の話を聞いて胸が熱くなり、涙が込上げてきた。

いい奴とは思っていたが加藤や浜田君がこんなにカッコイイとは思わなかった。

感動して熱くなった目頭を押さえながら加藤を見ると…

「余計な事まで喋るな、ムー君が怖がったらどうすんだよ」

と、加藤は浜田君の頭を小突いていた。



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