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転校



何で…加藤と浜田君が波工の制服を着て俺達の学校にいるのッ!?


言葉を失った俺達3人に近付く加藤&浜田君の2人は俺の目の前で立ち止まった。


すると加藤がゆっくりと手を上げて俺の頬を優しく撫でた。

加藤の指は流れるように移動して俺の唇に触れて感触を楽しんでいるようだった。

「ムー君、大好きだよ」

状況把握が出来て無い俺はキョトン…とした表情で加藤を見上げていたのだが・・・、俺の左右にいた慶斗と杉田君が、乱暴にガシッ!と強く加藤の腕を掴むと無理矢理に俺から引き剥がした。


加藤は不機嫌そうに眉間に皺を作り左右の彼らにガンを飛ばした。


「何だよ?気安く俺に触るな。腕とはいえ男に握られる趣味はねぇぞ…気持ち悪ぃ」


加藤は腕を振って慶斗と杉田君の手を振り落とした。

すると慶斗と杉田君も気持ち悪そうに顔をしかめて、わざとらしく手の平を制服のズボンに擦付けて汚れを拭き取る様な仕草をしていた。

そして杉田君が口を開くなり・・・


「汚い手で歩夢ちゃんに触らないでくれない?可愛い歩夢ちゃんが汚れる!唇に触っていたけど食中毒をおこしたらどうするの!?」

と、まるで加藤の事をばい菌扱いした。


こんな失礼な扱いをされて、流石に怒ると思ったが意外にも加藤は杉田君を見て舌打ちをしただけで、特に喧嘩をする訳でもなく視線を俺へと移した。

・・・だが、杉田君の言葉を聞いた途端すかさず浜田君が前に出てきた。


「はぁ!?おいコラ狂犬野郎、てめぇ加藤さんを侮辱してんのかゴルァ!」

可愛い顔をしている浜田君から発せられている声とは思えぬ程にドスのきいた低い声だった。

多分普通の人だったら浜田君の気迫に怯え上がると思うのだが修羅場を幾度と無く経験してきたであろう杉田君は余裕の表情だった。

慶斗は無言で、さっきから冷めた表情でゴミでも見るかの様な蔑む視線で加藤と浜田君を見ている。

加藤は周りが見えていないのか、もはや俺しか見えないのか…、熱い視線で真っ直ぐに俺を凝視してニヤニヤしており、今にも浜田君と杉田君が殴り合いの喧嘩をしそうなピリピリした雰囲気にも関わらず加藤は鼻の下をのばしながら場違いな表情をしており時折…

「むー君可愛いよ…むー君!学校というシチュエーションも最高♪」

…と、穴が開く程に俺を凝視しながら一人言を呟いていた。

加藤には悪いけど…マジでキモい、と思うのは仕方ないだろう。

だが、俺はキモい加藤はスルーして杉田君と浜田君を見た。

二人は既に拳を作りファイティングポーズをとっていたからだ。

やばい、このままじゃあ殴り合いの喧嘩が始まる!!?


加藤の馬鹿は一人で別世界に旅立って居る為、喧嘩の仲裁役は多分無理そうだし、慶斗は浜田君と杉田君が喧嘩しようが別に興味無いって感じだった。

つまり、喧嘩の炎が燃え上がる前に消火活動出来るのは俺しかいない!


「お、お願いだから…喧嘩しちゃ駄目!」


怖さと不安が入り混じる俺が潤んだ瞳で一年生コンビを見てお願いした。

情けない事に俺は二人の先輩のくせに、ウルウルした眼差しで彼らを見上げる事しか出来なかったのだが・・・、二人は俺を見るなり頬を赤らめて拳を降ろした。

「歩夢先輩に心配させたくないから今日の所は見逃してやるよ、狂犬糞野郎!」

「見逃す?お前マジで何様?ムカつく野郎だから今すぐに潰しちゃいたいけど、ここで喧嘩して歩夢ちゃんに嫌われるのは俺もゴメンだ。命拾いしたなぁ〜ヘタレうんこ」

杉田君と浜田君は最後に憎まれ口を吐いたものの、優しい眼差しで俺を見てくれた。

へぼい俺ごときの一声で、この二人の喧嘩を仲裁出来たのは幸いだ。

先輩の顔を立ててくれた二人には感謝だ。


「二人とも…ありがとう」

二人に向かって俺が微笑むと、杉田君も浜田君も目を細めて笑ってくれた。

空気がホンワカした所で、俺は気になっていた疑問を加藤と浜田君に投げかけた。


「何で波工にいるの?」

「ムー君に会いたかったから!」


加藤は目をキラキラさせて俺を見ている。



「……えっと、質問を少しだけ変えるけど、何で、その…うちの制服を着ているの?」



「ムー君といつも一緒にいられる様に転校した!!!」






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あきゅろす。
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