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ダークネス・ゲーム

「所構わずイチャつくのはいい加減止めたら?」
「……。」

 いつの間に現れた智里に友梨は視線を向けた。

「別にイチャついてはいないけど?」
「自覚ないのね。」

 溜息を吐く智里に友梨はムッとするが、彼女が来た理由に思い至り、溜息を吐いた。

「で、どう思う?」
「何処からどう見ても罠ね。」
「だよね…。」
「でも、乗るわよね?」
「勿論よ。」

 クスリと笑う智里に友梨は肩を竦めようとしたが、昌獅が邪魔で肩を竦める事が出来なかった。

「ま〜さ〜し〜。」
「……。」
「いい加減退いてくれる?」
「嫌だ、つったら?」
「……え〜と、お腹に強烈な蹴りと一発?」
「……。」

 友梨なら本気でやりかねない事に昌獅は溜息を一つ吐き、彼女から退く。

「よかった素直で。」
「……。」

 昌獅は複雑なのか、表情をやや強張らせている。

「んで、邪魔もんの高田妹は何の用だ?」
「あら、聞いていませんでしたか?」
「ああ、友梨の腕が温くてな。」
「なっ!」
「……ふぅ…。」

 昌獅の爆弾発言に友梨は顔を真っ赤にさせ、智里は冷めた目で溜息と一つ吐いた。

「どうやらお姉ちゃんの頭が湧いた訳じゃなく、昌獅さんの頭が湧いているようね。」
「…憎たらしい奴だな。」
「褒め言葉かしら?」
「……さすが、魔王だな。」
「……。」

 無言で睨む智里に昌獅は友梨を抱き寄せた。

「悪いが、俺の頭が湧いた訳じゃなく、只単にこいつを好きなだけだ。」
「……それが湧いたと言うんじゃないのかしら?」
「ふん、全然違うな。」

 友梨はこの二人の戦いを黙ってみている事も辛くなってきたのか、昌獅の腕からキョロキョロと視線を動かした。

「何やってるんだ?」
「うみゃ…。」

 パジャマ姿の涼太と美波が出入り口に立っていた。

「こんな夜中に…。」

 欠伸を噛み締め、涼太は眠い為かこの騒ぎにうんざりしているのかは分からないが、目付きが悪くなっている。

「ごめん、起こした?」
「…ん〜。」

 素直に謝る友梨に涼太は表情を和らげるが、智里と昌獅に向ける視線はかなり冷ややかなものだった。

「友梨先輩だけの所為じゃないですから。」
「…ごめんね、涼太くん、美波。」
「うみゅ〜…。」

 日本語を喋らない美波に友梨は苦笑を浮かべながらそっと昌獅の腕から抜け出し、自分の肩に掛けていたカーデガンを美波の肩にかけてあげる。

「…これで、勇真さんがいたら、全員そろっちゃうわね。」
「ごめん、起きてるよ。」
「えっ!いつから?」
「智里ちゃんが来た時からかな?」
「…ごめんなさい。」

 全く勇真の気配に気付かなかった友梨は肩を落とした。

「仕方ないよ。」

 勇真が穏やかに微笑み、友梨は苦笑を返す。

「…変な所もお見せしたんですよね。」
「……。」

 友梨の台詞に今度は勇真が苦笑を浮かべる。

「ごめんね。」
「…う〜、昌獅の馬鹿〜。」

 友梨は穴があったら入りたいとおもうが、残念ながらここには穴が無い。

「それにしても、昌獅も変わったね。」
「変わりすぎよ…。」

 所構わず友梨にくっ付こうとする昌獅に友梨は嬉しいけど、かなりうんざりするものがあった。

「まあ、もしかしたら、あれが本当の昌獅なのかもしれないね。」
「……。」

 勇真の一言に友梨は顔を上げた。

「……勇真さん。」
「なあ。」

 二人の会話にいかにも眠そうな声が割り込んできた。

「いつまで…喧嘩させとくんだよ?」
「あっ…。」
「つ〜か、こいつ寝かしてきてもいいか?」

 涼太は勇真を睨み付けるように見て、そして、自分に凭れかかりながら舟を漕いでいる美波を指差す。

「あっ、ごめん涼太くん重かったでしょ。」
「いや、重くはないけど…。」

 男の横でこうもすやすや眠られていると男として見られていない気がして涼太は内心複雑だった。

「……複雑ね。」
「だな。」

 友梨と勇真は哀れんでいるような顔をした。

「涼太くん、明日は早いから貴方も休んでね。」
「いいんですか?」
「ええ、智里と昌獅は放って置いても大丈夫だけど、貴方たちはまだ中学生だしね?」
「ありがとうございます。」
「うん、明日頑張ろうね。」
「はい。」

 友梨に対してだけは素直な涼太に、勇真は苦笑した。

「それじゃ、二人ともお休み。」
「ん。」
「うにゅ〜……。」

 年少組を見送った友梨と勇真は同時に顔を見合わせ、火花を散らしまくっている智里と昌獅を見た。

「これ、どうしましょうか?」
「そうだね…。」

 困ったように勇真が笑うが、これ以上喧嘩させれば明日に支障が出ると思い、二人はそれぞれの肩を掴んだ。
 因みに、友梨は智里、勇真は昌獅の肩を掴んだのだった。

「はい、ストップ。」
「何よ、お姉ちゃん。」
「お前もいい加減にしろ。」
「……離せよ。」

 互いをとめる人物を睨む二人に友梨と勇真は同時に言った。

「「明日に響くからそこまでに――。」」
「しろ」
「したら。」
「「……。」」

 二人の最もな言葉に智里たちは黙る事しか出来なかった。そして、二人は溜息を同時に吐き、その事が気に食わなかったのか最後に睨み合い、自室に引いて行ったのだった。

「ごくろうさま。」
「勇真さんもね。」

 二人は互いをねぎらった。そして、夜は明ける。

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あきゅろす。
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