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ダークネス・ゲーム

「友梨。」
「えっ?」

 唐突に昌獅に名を呼ばれた友梨は怪訝な顔で彼に近付いた。

「どうしたの?」
「これを見てくれ。」

 昌獅は友梨に見やすいように【爆弾】を傾けた。

「――っ!」

 友梨はそれを見て目を見張った。
「それって……。」
「俺たちの保険だな。」

 昌獅はそれを見ながら嘲笑を口元に浮かべる。

「もし、俺たちがこの【爆弾】の解体に失敗しそうになった時、誰かが犠牲になる事で、二十四時間の猶予があたえられるか……。」

 昌獅の瞳に怒りという炎が宿る。

「クソ野郎が!」
「昌獅……。」

 友梨はそっと昌獅の肩に手を置いた。

「絶対そうならないように頑張ろう。」
「……。」
「大丈夫だよ、何せ私たちには最強のお守りがあるじゃない!」
「………?何だよそれ。」

 最強のお守りが何なのか分からない昌獅は怪訝な顔をし、友梨はニッコリと微笑んでいた。

「智里。」
「…………………………。」
「ね、最強…いや最凶?ううん…最恐??」

 「さいきょう」という言葉をどれにしようかと友梨は頭を悩ませている間、昌獅は呆気にとられていた。

「ね?どれだと思う?」
「…………くっ…。」
「く?」
「ははは……最強な、確かにアレは最強に違いない。」

 笑い出した昌獅に友梨ははじめ目を見張ったが、つい彼の笑みが優しかったのでつられて笑った。

「ふふふ…。」
「あ〜、笑った、笑った。」

 昌獅は目じりに浮かんでいた涙を拭い去った。

「昌獅、そこまで普通笑う?」
「お前だって笑ってたじゃないか。」
「私のはあんたにつられただけよ。」
「本当か?」
「本当よ。」

 空気が和らいでいた、だけど、そこに、冬の風を思わせる、あの声が響いた。

「何、遊んでいるのかしら?お姉ちゃん?」
「ち、智里!?」

 友梨が振り返ると、不機嫌を貼り付けたような顔をした智里の姿があった。

「いい加減にしてもらえる?」
「うっ……。」
「こっちには時間が無いのよ?」
「……うう…。」
「もし私語をするようだったら二人の時にしてもらえるかしら?お姉ちゃん?昌獅さん?」

 智里の背後から氷の柱が友梨には見えた気がした。

「き、気をつけます……。」
「そう、気をつけるのね?」
「う、うん……。」
「もし、また同じ事を言わせるんなら……分かっているわよね?」
「――っ!!」

 智里の背後に般若の面が見えた気がした……。
 そして、友梨は思ったこの最凶のお守りは…敵も潰すが、味方も潰すのだと――。

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