ダークネス・ゲーム 8 「友梨。」 「えっ?」 唐突に昌獅に名を呼ばれた友梨は怪訝な顔で彼に近付いた。 「どうしたの?」 「これを見てくれ。」 昌獅は友梨に見やすいように【爆弾】を傾けた。 「――っ!」 友梨はそれを見て目を見張った。 「それって……。」 「俺たちの保険だな。」 昌獅はそれを見ながら嘲笑を口元に浮かべる。 「もし、俺たちがこの【爆弾】の解体に失敗しそうになった時、誰かが犠牲になる事で、二十四時間の猶予があたえられるか……。」 昌獅の瞳に怒りという炎が宿る。 「クソ野郎が!」 「昌獅……。」 友梨はそっと昌獅の肩に手を置いた。 「絶対そうならないように頑張ろう。」 「……。」 「大丈夫だよ、何せ私たちには最強のお守りがあるじゃない!」 「………?何だよそれ。」 最強のお守りが何なのか分からない昌獅は怪訝な顔をし、友梨はニッコリと微笑んでいた。 「智里。」 「…………………………。」 「ね、最強…いや最凶?ううん…最恐??」 「さいきょう」という言葉をどれにしようかと友梨は頭を悩ませている間、昌獅は呆気にとられていた。 「ね?どれだと思う?」 「…………くっ…。」 「く?」 「ははは……最強な、確かにアレは最強に違いない。」 笑い出した昌獅に友梨ははじめ目を見張ったが、つい彼の笑みが優しかったのでつられて笑った。 「ふふふ…。」 「あ〜、笑った、笑った。」 昌獅は目じりに浮かんでいた涙を拭い去った。 「昌獅、そこまで普通笑う?」 「お前だって笑ってたじゃないか。」 「私のはあんたにつられただけよ。」 「本当か?」 「本当よ。」 空気が和らいでいた、だけど、そこに、冬の風を思わせる、あの声が響いた。 「何、遊んでいるのかしら?お姉ちゃん?」 「ち、智里!?」 友梨が振り返ると、不機嫌を貼り付けたような顔をした智里の姿があった。 「いい加減にしてもらえる?」 「うっ……。」 「こっちには時間が無いのよ?」 「……うう…。」 「もし私語をするようだったら二人の時にしてもらえるかしら?お姉ちゃん?昌獅さん?」 智里の背後から氷の柱が友梨には見えた気がした。 「き、気をつけます……。」 「そう、気をつけるのね?」 「う、うん……。」 「もし、また同じ事を言わせるんなら……分かっているわよね?」 「――っ!!」 智里の背後に般若の面が見えた気がした……。 そして、友梨は思ったこの最凶のお守りは…敵も潰すが、味方も潰すのだと――。 [*前へ][次へ#] [戻る] |