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ダークネス・ゲーム

「そういえば、友梨ちゃんたち…朝ご飯食べてなかったね。」
「あっ…。」
「そうだ…。」

 勇真の唐突な言葉に涼太と美波は声を漏らす。
 一方二人を閉じ込めた張本人である智里は……。

「大丈夫よ。」

 暢気に食後のお茶をすすっていた。

「……。」
「……。」
「ねえ、智里お姉ちゃん。」

 黙り込む男性陣と違い智里の行動に慣れている美波だけが、言葉を発する。

「いつまで、友梨お姉ちゃんたちを閉じ込めておくの?」
「さあ?」
「さあって……。」
「お姉ちゃんが落ち着くまでとしか言えないわ。」
「……?」

 美波は分からないのか首を傾げ、涼太を見詰めるが、彼も智里の言葉の意味を理解できないのか怪訝な表情をしている。

「どうせあんたたちには分からないわよ。」
「何でよ〜。」
「……。」
「戦う者にしか分からない痛み、見守る者にしか分からない痛み。わたしにはお姉ちゃんの痛みなど分からないけど…。」
「ふえ?」
「……。」
「まあ、それでも、分かろうとする事だけは出来るかもしれないわね。」

 自己完結させる智里にますます美波は訳が分からなくなったが、涼太の方はほんの少しばかり分かりかけた。

「それじゃ、わたしは部屋に篭るわ。」
「へ?」
「やりたい事があるの。」
「?」
「智里ちゃん。」

 席を立とうとする智里に勇真が呼びかける。

「何かしら?」
「もし、何か手伝える事があったら呼んでくれ。」
「ええ、容赦なく呼びつけるつもりよ。」
「……。」

 智里の言葉に勇真は苦笑を浮かべる

「そうそう、呼びつけるのは勇真さんだけじゃなく、涼太くんと美波もよ。」
「ふえ〜。」
「……最悪だ…。」
「それじゃ…ああ、お姉ちゃんの食事の件なら心配は無用よ。」
「?」
「どういう意味かな?」
「……。」
「昌獅さんに投げつけた救急箱の底が外れる仕掛けになっているの。」
「……。」
「……。」
「?」

 察しの良い二人はまさかと思うが、どうも察しの悪い美波だけは分からなかったようだ。

「ねえ、ねえ、どういう意味?」

 美波は顔の強張っている涼太の服の裾を引っ張る。

「分からねえのか?」
「うん。」
「……。」
「どういう意味?」
「……あのな、美波…。」
「からくりの箱に食べ物を隠したから、大丈夫と言いたいだけよ、察しの悪い、美波。」
「ふああ…、すごいね、智里お姉ちゃん。」
「……。」

 涼太は思わずこの姉妹を何とかしてくれと心の中で呻いたのだった。

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