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08


あの日は天気が良くて、雲もない快晴だった。


裏庭の切り株に座り、空を仰ぐ悠の姿。



優に似ているとか関係なく、太陽の光を浴び、泣いているのかその光で頬がキラキラと輝いていて綺麗だな…と思った。


でも、今にも消えてしまいそうな程に儚く見えて、自分のエゴで悠を利用しようとしていると思ったら胸が苦しくなった。


けど優を取り戻したい。


たつきが憎い。


でも悠は関係ない。


葛藤だった。


愛する人を取り戻したいが為にオレは人を傷付ようとしている。


この子だって、たつきの女癖悪さに十分傷付けられてきたはず。


なのにオレは、悠に救いを求めるかの様に一枚の紙を手渡した。


携帯の番号とアドレスを書いた紙を。





でも悠から連絡を寄越すことはなかった。



校舎裏で接触してから一週間後、オレから悠に連絡をした。






………………………



件名:校舎裏で
本文

話したい事がある。
放課後、切り株の所で待ってるね。

………………………



放課後、オレよりも早く来ていた悠は切り株に座って待っていた。




『話しって何?』

『オレね、ずっと悠が好きだったんだ』


ウソ。


『いつもココに来ている悠が綺麗だなぁって、思ってたんだ』


半分ウソで半分本当。


『オレと付き合ってほしい』


優を取り戻す為に。


『無理』

『…だよね、恋人居るんでしょ?』

『いや、もう結構前に別れてっから』


別れてる?


なら、オレの告白は意味が無い…?


奪う前に二人が終わってたなんて。


『でも、忘れられないんだ…だから無理』




無理ね…




でも大丈夫。




自信あるから。




優の代わりくらいにはなってもらわなきゃ。



だってさ、悠がたつきをちゃんと捕まえてないから悪いんじゃん。




悠がしっかりたつきの気持ちを掴んでいたなら、優がオレから離れる事はなかったんだ。



ねぇ、そう思わない?




君だって寂しいでしょ?




悲しいでしょ?




大好きな人が浮気して、挙げ句の果てに自分から離れていくなんて。




オレも寂しい。

悲しい。




『…それでも構わない』

『……え?』

『悠が隣に居てくれるだけで良い』




なんて臭いセリフを言いながら、オレは涙目で微笑んだ。




―――――コレで落ちる。




あぁ、なんて醜い自分。



たつきに向けていた感情を、悠に向けてしまうだなんて。



優がオレから離れた事を悠の所為にするなんてね。



一緒に空を見上げていたあの日、



オレは確かに君を綺麗だと思ったよ。



傷付き、涙を流していた事も知っていた。



でもさ、




やっぱり君は優に適わないんだよ。



オレも、君の好きなたつきに適わない様にね?





『お願いします』






オレの想いが通じ、心から喜んでいるんだという様に満面の笑みを向けてオレは悠を抱き締めた。








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