07 近すぎて樹紀の顔が見えない。 オレは一歩下がり、オレよりも十センチ以上差のある樹紀を見上げた。 「……樹紀?」 「何故言わない」 「………何が?」 樹紀の言ってる事が分からない。けど、樹紀の目は真剣だった。一体何の事だろう? 「萩原との関係だよ」 「はぁ?………ぁあっ!!」 忘れてた。キスしてんの見られてたんだ。 「付き合ってんなら教えてくれても良かっただろ?」 「付き合ってねぇし」 「なら何でキスしてたんだよ?」 「アレは、遅刻のバツだってさ」 「遅刻のバツで簡単にキスすんのかよ?」 「……何それ、樹紀の方が酷いじゃん!!いっぱい女居るクセにオレの事言えんのかよ!?つかさ、オレが誰と何してようが樹紀には関係ないよな?そうだろ!?もう恋人でも何でもないんだからッ!!!」 ムカついて、思っていた事を言ってしまった。オレが誰とでもする様な言い方されたから凄く悲しかった。 樹紀には、オレが軽そうな奴に見えていたんだろうか? そう思うと、涙が溢れ出した。 「……悠」 樹紀の大きな掌がオレの頬に触れる。ポロポロと流れる涙を優しく拭っていく。 何で……何で今頃優しくすんの? 何で……今になって悲しそうな顔するんだよ? ゆっくり、オレの顔に樹紀の顔が近付いて来た。後数センチで唇が触れそうになった時、オレは思いっきり樹紀の頬を叩いた。 パシンッ!!と屋上に叩いた音が響く。 「…何のつもりだよ?」 「…ッ……冗談だよ。して欲しそうに見えただけだ」 「っざけんな……誰がお前なんか…樹紀なんかとッ……!!」 「………悠っ!!」 オレを呼ぶ声がしたけど、樹紀を置いて屋上から走って出て行った。 ←→ [戻る] |