05 樹紀が去った後、漸く萩原はオレから離れた。 オレは萩原にキスされた唇が気持ち悪くて、カーディガンの裾で痛くなるまで唇を拭った。 「そんなに嫌だったのか?」 「当たり前だろ!!つか何でこんな事するんだよ!?」 「遅刻し過ぎたバツだ。…それとも、本気の方が良かったか?」 「…ざけんな」 「気だけは強いのな。その勢いがあんなら中原(なかはら)にケツ振りな」 「どういう意味だよ?」 「お前見てるとさぁ…何かもどかしいんだよ。中原が好きなくせして行動を起こさないからイライラすんの。そんなんしてっとオレが中原貰うぜ?」 それで態とキスしたのか。 樹紀が必ずプリントをココに持って来る事を分かってて…でも何で? 萩原はオレが樹紀好きなの知ってんのに。 何か、裏切られた気分だ。 「…ダチだと思ってたのに!!萩原だけにはやらねぇよ!」 「冗談だって!つか誰がダチだ。悠とダチになった覚えはないぜ?」 「うわ!!酷ッ……てかどうしてくれんだよ!?樹紀に誤解されちゃったじゃん!!」 「良いだろ別に」 「良くないからっ!!」 「誤解って言っても、別にお前恋人でもねぇんだから関係ないだろ。さっさと教室戻れ」 「………そんな言い方しなくても…」 犬を追い払うみたいにシッシと手を振る萩原を睨み付け、オレは職員室から出て行った。 ←→ [戻る] |