12 「……嫌い」 「……え!?」 「嫌いになるつもりだったけどやめた」 「…何ソレ?」 「陽がオレの事そんなに嫌いなら、オレも陽を嫌いになろうと思った」 「じゃあ……」 「オレも陽が好きだよ。大切な弟だ」 「………弟」 「そっ!たった一人の、この世に一人だけのオレの大切な弟!!」 「………」 「何か…不満か?」 「…いや」 「じゃ、買い物行こう!」 久々に、陽と話した。 久々に、陽と仲良くできた。 陽が、ふざけてじゃなく、ちゃんと兄ちゃんって言ってくれた。 兄ちゃんのご飯は美味しいといっぱいおかわりしてくれて、兄ちゃんと一緒に寝ると駄々こねて、弟は本当に可愛いと思った。 でも、シングルベッドに男二人は狭い。 「なぁ、兄ちゃん」 「何?」 「中原樹紀はいつから好きだった?」 「…幼稚園の頃からかな」 「そんなに幼い時から?」 「あぁ」 「どこが好きなの?」 「何でそんな事聞くんだよ?」 「……別に」 「何だよ言えよ」 「言えない……言える訳ないじゃんか…」 今日の陽は色んな顔見せてくれるな。 何でそんな悲しそうな顔するんだよ。訳解んねぇよ。 「お休み…悠」 「………ごめんな、そんな顔させて」 「………ッ…ぅ…くっ…」 また、泣かせてしまったな。 オレより大きい陽の身体を自分に引き寄せ、抱き締めてやる。 暫くして、陽の口から規則正しい寝息が聞こえてきた。 「お休み、陽」 陽が生まれた時から側に居たのに、オレは陽を知らなすぎた。陽がオレを避けるから、知ろうともしなかったんだと思う。 もっと、もっと陽の側に居てあげたら陽は傷付かずに済んだのだろうか? もっと、陽と触れ合っていたなら、陽はこんな事しなかったのだろうか? 全部、兄ちゃんが悪いんだよな。 ごめんな。 陽を傷付けてたなんて、兄ちゃん気付けなかった。 だから、オレは 陽を責めたりなんかしない。 しないから… また、 お兄ちゃんって、 言ってよ ←→ [戻る] |