[通常モード] [URL送信]
11


「泣くなよ…言い過ぎた。ごめん」


声も出さずに肩を震わせて泣いている陽に、オレは初めて自分から陽を抱き締めた。


「ごめんって。弟泣かす兄ちゃんは最低だよな」


オレの背中に陽の腕が回り、ギュッと力強く抱き締め返してきた。何だか初めて兄と思われた様で、初めて陽に優しく出来たと思う。


オレとは違う天然の入った黒髪に手を伸ばし、優しく撫でてやる。こそばゆいのか、ピクリと身体を震わせた陽は、図体に似合わず小学生を思わせた。


そうだ、まだ、陽は小学生だったんだ。


「兄ちゃん飯作るからさ、何食べたい?一緒に買い物行こう」

「………悠、本当に…ごめん」


俯いていた顔を上げ、もう一度陽は謝った。泣いた所為で陽の目は真っ赤だ。


「兄ちゃんもごめん。さ、買い物行こう!」


陽から離れ、立ち上がった時携帯が鳴りだした。テーブルに置いていた携帯を手に取ろうと手を伸ばしたけど、陽の手で遮られてしまった。


「何?」

「取らないで…」

「は?でも鳴ってるし」

「オレから兄ちゃんを取らないでよっ!!」


………はい?


「兄ちゃんはオレのなの!!兄ちゃんはオレの…っ!!」


………はぁ?

何言ってんのこの子。
アンタの兄ちゃんはオレだし、一生ソレは変わらないけど?
誰かの兄ちゃんになるつもりもないし、んな事ある訳ない。


本当、陽は解らない。


「樹紀なんか嫌いっ!!樹紀を好きな兄ちゃんも嫌いっ!!」


何で樹紀が出てくるんだよ?どうなったらそんな流れになる訳?


「良いから貸せよ!!」

「嫌だぁーーーーッ!!」


ギャアギャア喚く陽は本当に小学生らしかった。

陽から携帯を奪い、通話ボタンを押す。


(もしもし悠?何?何かそっち煩いわね)

「母さん?陽が駄々こねてるだけだよ」


オレの電話相手が解り、陽は大人しくなった。

何だったんだよ?


(喧嘩でもしたの?)

「まぁ、そんな感じ」

(仲良くしてよ?母さん達今日帰らないから)

「………え?何で?」

(父さんがね、明日休みになったの。だから一泊して帰るわ)

「はぁ?何ソレ!!ドコに居んの?」

(大阪のUS○に居てんねん)

「………」

(…どないしたん?)


何で関西弁になる?


「……似合わない」

(あ、そんなん言うたらお土産買わへんよ?)

「解ったからやめて」

(陽と仲良くね!!)

「はいはい」


ピッ…


「母さん?」

「そ、母さんと父さん今日帰らないって」

「…そっか」

「で、さっきのは一体なんだったんだ?」


兄ちゃんを取らないでって、一体どう言う事だ?


「…言わないといけない?」

「別に。興味ないし?」

「興味ないって、傷付くね」

「オレはお前にずっと言われてたんだぜ?」

「うん…。本当にごめん。本当は大好き」


……………はあッ!?




11/50ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!