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01



「樹紀(たつき)ーーーっ!!」


午前八時


今、全速力でオレは樹紀を追っ掛けている。
一緒に登校する為に樹紀が家にわざわざ迎えにきてくれたんだけど、オレは寝坊してしまったのだ。オレが寝坊した日は、樹紀は必ずオレを置いて先に行く。


金色の髪やピアス、ネックレスは当たり前で、外見からしたらお世辞でも真面目とは言えないくらいの不良。授業とか普通にサボったりする癖に何故か遅刻だけは嫌うのだ。

必死に追い掛けているのに、何故か樹紀はどんどん離れていく。届きそうな距離に近付いたと思ったらまた引き離されて、樹紀の隣に並ぶ事が出来ない。

もうオレの肺は限界で、機能を果たしてないくらい膨れがあっている様な感覚に襲われ、オレは信号で足を止めた。

体中の酸素を使い果たしたのか、オレの肺はより多くの酸素を求めて呼吸する度にゼェゼェと乱れた音が口から洩れる。

「……ッはぁ…クソッ…絶対オレの声聞こえてるはずなのに」

遠くなり、オレの目に小さく映った樹紀の後ろ姿を思いっきり睨んだ。
睨んだ所で樹紀に分かるはずはないんだけど、腹立だしくて睨まずにはいられなかった。


今、オレが止まっている信号を渡ったらオレ達の最寄り駅だ。樹紀は駅に着いたのに、改札を通る事なく駅前で立っていた。

もしかしてオレを待ってくれてる?
良い所あるじゃん!!

呼吸を整えている間に何回目かの青信号を迎え、オレは何の躊躇いもなく樹紀に向かって走った。

「たーつー……」

右手を振り上げ、名前を呼ぼうとして途中でやめた。走り出して勢いをつけたオレの足もピタリと止まる。






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