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密やかな抗争


「ボス、少し休まなきゃ駄目よ」
「もう少し」

ソファに体を横たえた髑髏は気だるげに、隻眼で綱吉を見る。部屋に響くのは綱吉の指が書類を捲る音とアナログ時計の針の音、そして二人分の呼吸。一通り書類に目を通した綱吉は重い瞼を閉じては開きを繰り返す髑髏を見て苦笑する。
「もう眠ったら?」と優しく提案しつつも、綱吉は新たな書類に手を伸ばす。薄いカーテン越しの月は傾き、あと数時間で太陽が顔を出す。つまりは深夜。ここのところ働き詰めの綱吉を相手に髑髏は眠りにつこうとする体を奮い立たせ、必死に意識を保とうとする。


「ボスが眠らないなら、私も眠らないから」
「……駄目だよ。君は眠らないと身体に障る」
「ボスだって同じだもの」

言いつつも、髑髏の瞳は見るからに眠たげで、閉じては数秒後に意識を引き上げるを繰り返す。

「ボス、」
「…わかった。一回休むよ。だからベッドで寝なさい」

椅子から離れた綱吉は髑髏を抱き上げ、ベッドの上に下ろす。髑髏に毛布と羽布団をかけてやり、青色の髪を撫で、額にキスを落とす。

「おやすみ、クローム」

そう言って夢の国に出かけた少女を置いて仕事に戻ろうとして、綱吉は違和感に気付く。

「……クローム」

髑髏の手は白いシャツをしっかりと掴み、どんなに力を込めても離れる素振りは無い。
驚きと呆れを混ぜた息を吐き、綱吉はベッドに潜り込んだ。





眠りに落ちるまで数秒 翌朝まで離されないてのひら


綱吉と髑髏


あきゅろす。
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