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なみだいろのあめ



「あめ、止まない、ね」

止んでほしいのかどうかもわからない。けれどほかに言うことも見つからなくて沈黙もそろそろ辛くなって難産した言葉がそれだった。腕の中にいる少女はしゃくりあげて肩を震わせる。傘は足元に無残に転がっていてどう甘く見ても修理は出来なさそうだ。
降り続ける雨は容赦なく服を濡らし体温を奪っていく。水滴が前髪を伝って少女の明るい色の髪に落ちる。
(俺がもう少し言葉を持っていたならこのひとを動かすことが出来た?)
冷たいのか寒いのか感覚さえ曖昧になり、地面が水を吸い水溜りが出来始めたころ。


「いって、いいのよ。おいて行ってくれていいの」


喉の奥から絞り出したような掠れた少女の声が雨音に混じった。他者を案ずるなど普段することのない彼女の行動に得体の知れない感情が頭をもたげる。


「こんな状況で、おいていけるはずがないだろ」
「あわれみなんていらないわ」
「違う。そんなんじゃないんだ」


どうしてそんなふうに感じるしかできないんだ(可哀想?違う)?
回した腕に力を込める。伏せられた顔が上がることは多分無いのだろう(俺の前では)


「M.M」
「………」
「かえろう。ここに居ても骸は帰ってこない」


(はじめから離れると棄てていくと決めていたなら好意などみせるな。みせてやるな、よ)



靴に染み込んだのは涙色の雨。透明な滴は沁みこんで 
(乾いたら跡片もなく)





070326 綱吉とM.M




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