意地悪なキミ 8. 他の配役も決まり、練習は明日から始めることになった。 皆帰りはじめる中、俺は綾斗を待っていた。今日泊まらないことはわかっていたけど、せめて途中まで一緒に帰りたかったし、なにより謝りたかった。 「誰か待ってんの?」 いきなり後ろから声を掛けられ、びっくりして勢いよく立ち上がったせいで、ガタンっと机が倒れた。 「そんな驚かなくてもいいだろ」 「....向井」 後ろのドアにもたれ掛かって、笑っている向井が立っていた。 「なぁ、誰か待ってんの?」 「...別に。考え事してただけ。もう帰るよ」 このまま待ってても、向井に怪しまれるだけだな。校門で待つことにしよ。 「そうなんだ。じゃあ一緒に帰ろうぜ」 自分の耳を疑った。今、一緒に帰ろうって言ったよな。俺に。 「はぁ?なんで向井と?」 「いいじゃん。どうせもう帰るんだろ、それともやっぱり誰か待ってんの?」 「待ってねぇって!」 「じゃあ帰ろうぜ」 「...わかった」 仕方ない。向井に諦める気配はないし。綾斗には後で電話しよう。 机を直し、後ろ髪引かれる思いで教室を後にした。 [*前へ][次へ#] [戻る] |