意地悪なキミ 1. 俺の隣で、すやすや眠ってるこいつ吉岡綾斗。 俺はこいつの隣で眠った事はない。眠ってしまうと、全て夢で、起きたら消えてしまいそうで... あれは一ヶ月前... 俺は夕方、人気のない公園に呼び出されていた。目立つ存在じゃない俺に呼び出しなんて、冗談か嫌がらせしかないって思っていた。 20分待って帰ろうとした時に、公園の入口から人が歩いてくるのが見えた。暗くてよく見えないけど、女じゃないことだけはわかった。 「....!?」 目を凝らして見てみると、よく知っている人物だった。 吉岡綾斗、クラスでも人気者で学級委員、俺とは大違いの奴が何の用だよ。 「来たんだ」 「来たんだ?お前が呼んだんだろ!」 「そうだよ。でも来ないかと思ってたから、敢えて遅れて来た」 なんなんだよ、こいつ。 「意味わかんねぇ!で、なに?」 「俺と付き合わない?」 「何処に?」 「何処にって、はは!福田って天然?付き合うってのは、俺と恋愛しないかってこと」 はい?恋愛?吉岡と? いやいや、有り得ないだろ!俺の聞き間違いか! 「は?ちょ、ちょ、ちょっと待て!今、なんて?」 俺はパニックを起こしていた。クラスでも目立たないし、格好よくもない俺と付き合いたいなんて、冗談だろ!! 第一俺、男だし!!! 「だから、俺と付き合って。福田は俺じゃ嫌?」 俺より少し背の高い吉岡が、屈んで上目使いで見つめてきた。正直、ドキッとした。 吸い込まれそうな大きな目に、泣きボクロが印象的な目元。いつも潤っている唇。 おもわず、ゴクリと唾を飲む。 「嫌じゃ...ないけど」 あれから一ヶ月... 俺は綾斗に恋していた。 [次へ#] [戻る] |