destiny
*5
_____・・・
大広間という場でガヤガヤと全校生徒が集まり恒例の儀だという新入生の組み分けが始まる。
私もその一番最後に加わり寮が決まることになった。
グリフィンドールはもうあり得ないわね。あの五人はどうやら全員そうらしいし。特にエバンスと同じ寮になったら一人で居る時間がなくなってしまうわ。
残りの三つ…ハッフルパフの気質が私に合うとは全くもって思えないので却下。
…そうなるとレイブンクローかスリザリン。
私は色々事情が絡まりつつも一応純潔、それもかなりの地位なはずよね。
それなら…やっぱり。そうなるのかしら…
そんなことに思いを巡らせているとあっという間に私の組み分けの順番が回ってきた。
「リン・シトラス」
名前を呼ばれてもあくまで急に立ち上がるなんて品の欠片もないことはせず、優雅に軽やかに歩を進める。
差し出された帽子は古びていて眉をひそめそうになったが堪えて頭に載せる。
「…君には揺るがぬ自尊心があり、なにかを成し遂げるための勇気、知恵、協調性、強かさ……どれも素晴らしい能力や才能があるね」
占いのような口調で話しかける帽子は話が長くてまた少し憂鬱になった。
『世辞はいいわ。グリフィンドールとハッフルパフ以外ならどちらでもいいから早くしてくださらない?』
「ハッフルパフは確かに君には合わないかもしれないが…おっと勿論君の順応性を持てばやっていけるとは思うがね、グリフィンドールはなかなか君の未来において良き経験ができると思うが?」
『………私には"未来"なんてものはないの。ねえ、本当に早くしてくれないかしら。決断が遅いのは嫌いなの』
「ふむ……ならばもう君が求めているものを止めはしない。 スリザリン!!!!! 」
銀と緑の場がわっと湧き上がり、その他のところでは落胆の色に染まる。
早くこんな茶番から去りたくてさっさと案内されるところに歩み、奥の席に座る。
『ここ、いいかしら?』
「…ああ」
私が確認をとると無表情に返す黒いオーラを纏った男子生徒。
…ここの寮っていいわね。
バカの集団がいなくて思わず口角が上がる。
前を見るとこの学校の長であるダンブルドア校長が話をしていた。
「そうじゃそうじゃ!不思議に思ったものも多いことじゃろうが先程の一年生とは思えないあの女生徒はみんなの予想通り、転入生じゃ!事情があって特別に5年生の編入じゃよ。同じ学年、同じ寮のものは特に仲良くしてあげるんじゃよ。ほら、リンおいで」
ばっと視線が私に集中する。
ここの校長は変人だと有名だけど"仲良く"なんて言うのはやっぱり先生という職にあるのかしら…
臆す、なんて弱いところは見せない。
前に優雅に歩み出てしっかりと全体を見据える。
「ほら、みんなに挨拶してご覧」
『リン・シトラスです。途中編入ということでまだまだわからないことばかりですが皆さんと楽しい時間を過ごせるようになりたいです。よろしくお願いします』
そう言って綺麗に微笑む。
「うむ、じゃあお戻り。…さあ、夕餉じゃ!」
わっと場が緩み、生徒の意識が一瞬にして数々の料理にうつる。
そんな姿を見ながら私は元の席についた。
早くこの騒がしいところから出たいわ…
「……お前はマグルなのか?」
不意に隣の黒い男子生徒にふっとしていると聞き逃しそうなくらいの声で私に尋ねてくる。
『…まずは私の名前から知っていこうとするべきじゃないかしら?』
「名前は知っている。シトラスだろ」
皮肉るように返すとサラリと答えられ少しびっくりした。
「一度聞いたことを忘れるほど僕は馬鹿じゃない。…それで、どうなんだ」
急かすようにそう言われたのでからかってみたくなる。
『なぁに?私がマグルだとしたら"穢れた血"だから貴方の隣には座っちゃいけないのかしら?』
「っ、…僕は、別に、血にこだわっているからこんなことを聞くんじゃ……」
『…?あら、じゃあなぜかしら?』
軽くからかっただけでそんな風に言われて調子が狂ってしまった。
思わず微笑を浮かべるのを忘れてしまうほど。
「…ま、マグルじゃないのか…。失礼なことを聞いてすまなかった。…僕の名前はセブルス・スネイプだ。五年生、だから……わからないことがあったら聞いてくれ。っじゃあ失礼する」
セブルス…スネイプ。
いきなり無礼なことを聞くからどんな人種かしら、なんて思ったけれど思ったより礼儀を知った人間だったわ…
まあさっさと席を立つところはどうかと思うけれど。
少し辛口にそう評価してメインディッシュのステーキを切り分ける。
そうして一人で食べるとまわりにわらわらと人だかりができて疲れてしまった。
…今日は早く寝ないと…
本当に疲れていた私はこれからのことなんて予測できるわけもなかった。
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