小説 ピンクのネクタイ事件後、翌日。被害者二名。 青年、言葉に窮す。 彼の上司は壮齢で服装も端々まで洗練され、どこをとっても知性に溢れていた。それ故に、総一郎は優慈にとって憧れる人であり目指すべく人であった。 「おはようございます」 出社した総一郎を迎えるため、優慈は席を立つ。 いつもなら、そこでコートを受け取るのだが、なぜか総一郎はなかなかコートを脱ごうとしない。むしろ、マフラーまでして厚着のような気もする。 「あの…?」 いぶかしんで総一郎を見つめるが、心なしかその表情は暗い。体調でも悪いのかと優慈が心配になったその時、総一郎はゆっくりと口を開いた。 「幾つになっても女性の心はわからんよ……」 ぽつりと呟かれた言葉に、優慈は言葉に詰まった。 青年、言葉に窮す。 「ピ、ピンクのネクタイも斬新でいいですよね…っ!」 [前へ][次へ] [戻る] |