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Dangan ronpa Series
▼銃声音と彼女の心 【苗木 誠】

※少し暗め














パンッ、パンッ
一つ銃声がなるたび人が倒れてゆく
私はそれを何も感じぬ心で、無表情のまま黒光りする重く冷たいそれを握り引き金を引いていく

これは人殺しなんかじゃない。任務なのだ
上から与えられる仕事でやっているだけだ
私は私が黒光りのコレを向けた相手がどんな事をしてどんな罪で私にコレを向けられる事になったのか私は知らない
何一つ私は素性を知らされずにやっている
教えられるのは、名前と顔。
その二つさえあれば個人を特定出来る。その他は、いらない





私が今回黒光りのコレを向けることになった相手は元希望ヶ峰学園の生徒達
江ノ島盾子という超高校級の絶望によって絶望にされてしまった残党達

その残党達は私と同僚である超高校級の幸運、もといい超高校級の希望である苗木誠を中心とした希望ヶ峰学園の生き残りの先輩に当たるだろう

私には何も関係ないのだが



さぁ、いつもの通り殺しという名の狩りに出掛けよう
いつも通り変わらず私は彼らにコレを向け引き金を、引く









『何ですか、これ』











私が任務場所のエリアに着いた時にはもう私の標的である残党達は揃っていた
……いや、その場に揃えさせられていた

残党達の瞳に光はなくグルグルと渦巻いて濁っていた
髪もボサボサに伸びきっていて、服も汚れていたり破れていたり
ここまでは私が今まで相手をしてきた者達と何一つ変わらない
だが、今回は一つだけ決定的に違った事があった


拘束され集められていたのだ。周りには希望ヶ峰学園の生き残り達、つまり苗木誠達が居た

いっけん彼らは残党達を確保しているように見えるが、実際は違うようだった
守るように、だが警戒しながらも立っていたのだ


……彼らは上に逆らったという事だろうか













『……どういうつもりですか?』

「紫嶋さん……」

『私の勘違いでなければ今の貴女方は上に逆らっているように見える』

「……見間違いや勘違いなんかじゃないないわ、あってるもの」

『では、貴女方は逆らったと?』

「うん、そうだよ。彼らを殺させたりなんかしない」

『………』

「悪いけど私達は退かないわ」

『……はぁ、分かりました。お好きにしてください』

「…………随分あっさりしているのね」

『私は別に貴女方を殺せとは言われてませんし。まあ、出来ますけどね』

「っ…………ありがとう、紫嶋さん」

『はぁ……、ということは無駄足ですか最悪ですね』

「…………貴女、何か隠していない?」

『何を隠すというのでしょうか?』

「……貴女はこの件をどう説明する気?上からの任務だったんでしょう?」

『ありのままを話すだけですよ、まぁ今回は失敗という事になるのでペナルティがあるでしょうね』

「え、そんな……っ!」

「そのペナルティはどういうものなの?」

『……さぁ?まだ受けた事が無いので分かりませんね』

「………………そう」

『では、私は失礼しますね。ここにこれ以上用は無いので』










彼らを庇う訳ではないが、さっきのペナルティを受けた事が無いというのは嘘である


私はペナルティを何回も受けた事がある
何回も何回も何回も何回も。

そのペナルティは肉体的ダメージのもので痣が無数に残る。
今は服の下に隠れているが腕捲り何かをすれば無数の痣が露になる
ペナルティを与える側は普段長袖長ズボンと隠れる場所にやり首や顔、手の甲等は痛め付けない



だが、それも今回で終わりであろう
私は上に思わぬ襲撃にあい標的を殺され、生きてた者は連れ去られたと言うつもりだからだ
その理由で逃げ帰った私に与えるペナルティは普段見える所に与えられても仕方ないのだ
周りは任務の時に出来た酷い無数の傷や痣と見えるからである



さて、それでは上にご報告といこうか











「……ここまでして悲鳴一つ上げないとは大したものだな」

『……ッケホ』

「おっと、こんな時間か……。今回はこれぐらいで良いだろう。もう行け」

『っ……はい、分かりました』











毎度の事ながらペナルティの後はフラフラする
色々な場所に色々な所を打ち付けられたり、切られたり殴られたりすれば当たり前な気もするが。
血も多く流しているし、案の定見える所にも与えられた

これは誰かと会った場合の誤魔化しが危うくなる
早く自室へ帰らなければ……、と思っている時に一番会いたくない人に出会ってしまいましたよ











「紫嶋……さ、ん?」

『……苗木誠ですか、どうしましたか?』

「どうしたって……、紫嶋さんこそその傷と痣はどうしたの!?」

『……先ほど手合わせをしてもらってこうなっただけですよ』

「手合わせって……誰に?」

『…………誰でも良いでしょう、貴方には関係の無い事です』

「っこっち来て!」

『っ苗木誠!?』










グイ、と力強く引っ張られ何故か苗木誠の部屋に連れて来られた
彼は私を座らせると救急箱を手に手当てをし始めた

何故彼は私の手当てをしているのだろうか
放って置けばいいものを。彼はつくづくお節介好きなのだろうか










『……』

「……痛む?」

『別に、特に痛みは無いですよ。傷を負うのはよくある事ですし慣れていますから』

「っそんなのダメだよ!慣れちゃいけない事だよ…っ!」

『どうして貴方が苦しそうなんですか?貴方は何も痛い思いなどしていないというのに』

「傷を負っていなくても、仲間が傷付いてる姿を見れば誰だって辛いよ……」

『……仲間、ですか…』

「紫嶋さんがどう思っていても僕達は君を仲間だと思っているよ」

『……御勝手にどうぞ、後訂正が一つ』

「なぁに?」

『十神白夜や霧切響子は仲間とやらが傷付いていたとしても心配をする姿や顔色変える姿を一切見せないと思います』

「あはは……、紫嶋さんの中の二人って…………」












一通り手当てを済ませた苗木誠は救急箱を置き、何故か私を自身のベットに寝かせられた
……彼は本当に一体何がしたいのだろうか

自分のベットに他人を寝かせるなど、しかも私の場合手当てしたからといって血が出ていた
やはりこの男はよく分からない。まぁ、分かりたくもないが











『苗木誠、』

「そのフルネーム呼び止めてほしいなー、なんて」

『……苗木、さん』

「っどうしたの?」

『…………何で声上擦ってるんですか?』

「その、ちょっとでも心を開いてもらえたみたいで嬉しくて……」

『……まぁ、いいです。質問です』

「何かな?」

『何故私はベットに寝かせられているのでしょうか、寝るのだったら私は自室に帰ります』

「怪我人は大人しくしてなきゃダメだよ」

『だから自室に帰ってゆっくり休むんですよ。なのになんで私は貴方のベットに寝かせられてるんですか』

「傷酷いし、また歩いたりしたら開く可能性が高いんだよ。それに他の人には多分ボク以上に煩く言われると思うよ?」

『……煩いという自覚はあったんですね』

「うっ……、まぁ、そりゃあ強引だったわけだし……」

『自覚してるだけマシですよ。自覚していない人は面倒臭いです、捕まったら最悪です絶望的です』

「そこまで言わなくても……」

『と、いうか私をここに寝かせて貴方は何処で眠るつもりですか』

「え、いや普通にソファーとか?」

『……私やっぱり自室へ戻ります』

「えぇ!?だ、ダメだよ!傷口開いちゃうよ!」

『ならば逆にしてください。私に貸したせいで風邪などになられては嫌ですからね』

「それもダメだってば!紫嶋さんは怪我人なんだから!」

『見かけに合わず強情ですね……』

「その言葉そのままそっくりお返しするよ……。というか見かけにって……」










ボクってそんなに弱そうなのかな……、と地味にショックを受けているらしい

いかにも草食って感じで逆らえなくて女の尻に敷かれるタイプですよ
でも、メンタルはゴキブリの様な生命力と底力ですけどね
超高校級の希望と呼ばれる理由が分かる気がします

まぁ、だからこそ彼の周りには人が集まるのだと思いますが。










『……本当に、ゴキブリみたいですね』

「え!?ゴキブリ!?」

『何でそんなに驚くんですか、男子でしょう』

「いや、居るのかと思ってビックリしちゃって……」

『……その他は女子みたいですね』

「その他?」

『いえ、なんでもないです』










頭に疑問符を浮かべながらも譲らないオーラが半端無いんですよね、彼。

もう、私も諦めましょうか……
この生命力と底力に一生勝てる気がしないので。
ですが普通に、はい分かりましたと言うのも何か嫌なのでここは彼に少し一子報いってやりましょうか?












『……はぁ、もう面倒臭いので自室は諦めますよ』

「え、本当に?」

『ですけど、貴方をソファーで寝かせる気などサラサラありません』

「えぇっ!?」

『だから一つ絶対条件です。拒否権無しです、貴方が拒否した瞬間に私は自室へ帰ります』

「え、と……条件って……?」

『貴方もベットに寝てください』

「……え、」

『聞こえませんでしたか?貴方も同じベッドで寝てくださいと言ったんです』

「えぇえええええええっ!?」

『……煩いです傷に響きます。何をそんなに驚く必要があるんですか、というか何故顔が真っ赤なんですか?』

「いや、あの、ゴメン……。後、顔が赤い事は聞かないで……」

『?……はぁ、分かりました』










私が提案した案に苗木……さんは一瞬呆けた顔になり固まったかと思うと顔を真っ赤にして叫んだ
何をそんなに驚く必要があるというのだろうか?

私は思い付いて一番良い案を提示しただけだというのに。
この部屋のベッドなら少し大きめの為女の私と小柄な苗木さんなら余裕で一緒に並んで寝られるだろう


それとも何か理由でもあるのだろうか












「というか驚くに決まってるじゃないか!ダメだよ一緒に寝るなんて!」

『何でですか?』

「……だって君は女の子でボクは男なんだよ?」

『だからどうしたというのですか。私は気にしません』

「いや、気にしてよ!」

『……はぁ、分かりました』

「もう少し紫嶋さんは危機感を持った方が良いよ……」

『いつでも危機感は持っていますが』

「そっちの危機感じゃないよ…………」










ヴーッ、ヴーッ
二人で議論しあっているなか、ふと私のポケットから響いた振動音。

これは、上からの任務だ
苗木さんも気付いたのか強張った面持ちになった


これはまた、面倒な時に仕事をくれたものですね
さっきまで人を叩いておきながら休み無しとは鬼ですか
まぁ、私に逆らうという権利は無いんですけども

私は心の中でぼやきながらも送られてきた電子メールに目を通した











「ねぇ、それって……」

『なんだと思いますか?』

「次の任務、だよね」

『はい、そうですよ。当たりです』

「いつの……?」

『私にくる任務は送られてきたらすぐの物です、ですからコレを読み終わり確認出来次第向かいますよ』

「っダメだよ!怪我してるのに……」

『そんなの上は関係の無いんですよ、動かせる駒は動かす。只、それだけの事なんです』

「そんなのって……あんまりすぎるよ……!」

『私はずっとこうです。貴方方が来る前からずっとね』

「え、来る前からって、配属期間は同じじゃ……」

『ここに配属される前も同じ様なもんですよ、なんら変わりありません。私は何処に行ってもやる事は同じなんです』

「…………かせない」

『……はい?』

「……絶対に、君を行かせない……!」

『何を、言ってるんですか……?』

「そんな状態の君を行かせるなんて自殺行為だ。それに今までずっとそんな生き方なんてあっていいはずが無いんだ!」

『それを貴方に否定する権利はありませんよ。私の他にも同じ様な人は沢山居ます』

「なら!ボクがその人達を救ってみせる!勿論一人じゃ無理だから仲間の力を借りて、何年でもかかっても良いから絶対にそんなのあっちゃいけないんだ……!」

『……何故そんなにも、一生懸命なのですか?』

「ボクらは非日常生活をついこの間まで送ってきた、いつ殺されるか分からない状況で生きてきた。皆人殺しなんてしたくないんだよ……、けどせざる終えなくなった」

『……人の欲望や考えは時に犯罪に走りますからね、その一線を越えてしまったんでしょう』

「だから、もう、あんな思いは二度としたくない。もう二度と仲間を……友達を失いたくない」

『……見事な綺麗事ですね。ですが流石超高校級の希望と呼ばれる事はあると思います』

「綺麗事でも良いよ。でもボクはそれを現実にしてみせる」

『……はぁ、好きにしてください。それと一つ言っておきます、そうやってでしか生きられない人間が居るというのを覚えておいてください』

「分かった、でも紫嶋さんはそうじゃないでしょ?」

『…………どうでしょうね』

「それにそれしか生き方が無いと思っているならボクが一緒に見つける、考えるよ」

『……まぁ、期待せずに見ていますよ』

「うん!見ていてくれるだけでも嬉しいよ」










さて、どうしましょうか
どっかの誰かさんの幸福希望論のお陰で私の中に上に逆らうという無かった選択肢が出来てしまったではありませんか


はぁ、誰か私のこの考えを打ち砕いてくれる人はいませんかね?
まぁ、打ち砕いてもらったところでまた苗木さんにそれを論破されそうですけどね



…………本当にこれからどうしましょうかねー…
















(っと、よし!)
(何が良しなんですか?)
(紫嶋さんをボクらと一緒の仕事にしたんだ!これで紫嶋さんはコレを握らずに済むよ)
(……本当にやりましたね、貴方)
(まずは紫嶋さんを殺しから遠ざけなきゃね!)

((幸運怖すぎます……希望凄すぎます……))

















―――――――……

未来機関でずっと外の絶望に犯されている人達を殺してきた少女ともう二度と仲間を失いたくない少年が希望を捨てずに奮闘するお話

何か途中で書いてて訳分かんなくなりました\(^o^)/
お粗末様でした!




130928





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