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短編集
[1話]思う
私ーーー夏川 ゆかりーーーは今土手にいた。
なんとなくそれなりにきれいな川を眺めながらメールをみる。
受信ボックスには1件も新着のメールはなかった。

私が同じクラスの柳瀬 亮からの告白をOKしてから、今日で丸2週間。
柳瀬は変わり者で、いつもぼーっとして虚空を見つめてるやつだった。ついでに容姿は人並み。でも、話すときは相手の目をしっかり見てるとこと、シャンプーのCMに使えそうなサラサラでキラキラしている髪は嫌いじゃない。

しかし、今日で丸2週間も経ったというのに、デートはおろか、学校ですらあまり話さないとはどういうことだろうか?
告白されたときにメアドと携帯番号は交換した。しかし、1.2回ほどしかメールが来た覚えがない。
さすがに付き合っているのかどうか、わからなくなる。
ついでに、私が柳瀬を好きなのかということもよくわからない。初めての告白に舞い上がってOKしたが、(嫌いなワケではなかったし…)これって、かなり相手に失礼なんじゃないかと思う。

…柳瀬はなんで私のことが好きになったんだろうか?容姿に関しては、自分でいうのはなんだが多少は人並み以上ではあると思う。しかしつり目で、話しかけられると緊張で無意識に睨んでしまう。性格は…普通か。上がり症というのはあるが、その他は普通。普通代表になれるくらい普通。まぁ、つり目のせいで友達は居ないんだけど…。

どれだけ考えても、この「どうして柳瀬が私を好きになったか」ということだけはわからなかった。

ふと頬に冷たいものが当たった。雨が降って来たようだ。空は一面真っ黒で、止む気配はない。折り畳み傘は学校に置いてきてしまったので、走って帰ろう。


家に向かって走っている間にも、雨は激しさを増していく。まだ少ししか走っていないのに、もう全身びしょ濡れだ。
ふと近くの公園に丁度雨宿り出来そうな所があるのを思い出す。私はその公園まで走ることにした。

約3分後。
私は公園に着いた。真っ先にあずまやのベンチへと向かう。
人が居た。
しかも、柳瀬が居た。
多少肩のところが濡れている。だぶん柳瀬も雨宿りをしているのだろう。3つあるベンチの真ん中に座り、目を瞑りながら音楽を聞いているようだ。
思わずぼーっと突っ立っていると、私のことに気づいたのか、ヘッドフォンを取り、私を見上げてきた。
「…あれ、夏川。何やってるの?」
「な、何って、雨宿り?」
「そうか。なら、座りなよ」

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あきゅろす。
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