ウェーリタース 第1話「スコラ」 「今日は遅かったね」 「うん。思いのほか授業が延びちゃってさ」 僕がティアと出会ってから11年が経った。僕は17歳になり、フェアリーテイマー…所謂妖精を使役する者…の育成学校に通っている。 「学校、楽しい?」 「う〜ん…。ティアがいたらもっともっと楽しくなると思うんだけどなぁ…。」 ティアは顔を陰らせ下を向いた。 「…私に学校は無理だよ」 「なんで?」 「イオ、私の体質知らない訳じゃないでしょ?」 「うん。もちろん」 ティアは、11年前から変わってない。いや、時が止まっていると言った方が正しいのだろうか?細くて長い銀色の髪、新緑を連想させる鮮やかな瞳、雪のように白い肌、薔薇色の唇。身体は華奢で、触れれば折れてしまいそうなほどだった。 それらはイオとティアが出会った11年前からほとんど変わっていなかった。ほとんどというのは、髪が少し伸びて、背もあの頃に比べると高くなっているからだ。 「なら、私が学校に行くとどうなるかもわかるよね?」 イオは前にティアから学校に通っていた時の話を聞いたことがあった。ティアの容姿が12歳くらいに見えるようになったとき、五公の薦めで学校に入った。五公とはこの国でフェアリーテイマーを多く輩出している5つの家系のことで、この国が周辺国から襲われないのは、この五公のおかげだという。ついでにイオは五公のうちの1つの家系の生まれだ。 それで、ティアが学校に行った時は、初めの頃は変わった髪色というだけで普通に友達などもいたのだ。しかし、1年、2年と年が過ぎていく間に、ティアの周りからは人がいなくなった。大きな理由としては、ティアが妖精の使役技術に優れていたことと、いくら時が経ってもさほど歳をとらないということだろう。 高位のフェアリーテイマーが非常に少ないため、妖精の使役技術に優れているということは尊敬と同時に激しい嫉妬の対象となる。更に歳をとらないのは気味が悪いと、いじめや憂さ晴らしの標的となっていたらしい。 それに気づいた五公はすぐに学校からティアを辞めさせたらしいが、それから一度も学校には行ってない。 [*前へ][次へ#] [戻る] |