[携帯モード] [URL送信]

虹色スコア
1話:公園
 C棟4階、今は使われていない教室で歌っていた彼女は悩んでいた。
「う〜ん…やっぱり、なんか違う…?」
 いつも通りに歌っているはずなのに何度歌ってもしっくりこない。
「それにしても、あれは誰だったんだろう…?」
この違和感は公園で歌った後から感じているものだった。

 
 違和感の原因は先週にあった。


 学校が休みということでふと思い立った彼女ー瀬川 優羽ーは朝からフラフラと街を歩いていた。 彼女が最近お気に入りの森林公園へと向かうためだ。 空気が澄んでいて、何よりもかなり昔からあるとても広い公園だからか人が少なく、落ち着くのだ。
 森林公園へ着いた彼女は真っ先にある場所へと向かった。 それは、この公園の5つもある出入り口から最も遠く、一番人がいないところだった。
見渡す限り誰もいないのを確認した彼女はおもむろに歌い出す。 この場所を発見してからというもの、暇があればこの場所に来ては歌っている。
「やっぱりここが一番落ち着く〜…」
両手を空高く突き上げ軽く背伸びをする。 まるでこの世界には自分しかいないのではないかと思わせるような自然の音しかしないこの場所が彼女は大好きだった。
 そしてまた彼女は歌い出す。
するとふいに自分の歌声とは違う声が混ざって聞こえた。
突然のことに彼女は動揺した。しかし歌うのは止めなかった。
あまりにも自然に自分の歌に入ってきた。それに、なにより気持ちがいい。
彼女の歌に合わせ響くように音程をずらしたり、コーラスを入れたりとその歌声の全てが清々しかった。彼女にとってそれは初めての感覚だった。
 この歌声はいったい誰?彼女は辺りを見回した。しかし歌うのは止めない。止めてしまったらこの歌声はもう聞けなくなるかもしれない。そう思ったのだ。
しかし人影は見当たらなかった。本当に誰なんだろう
しばらくの間歌い続けた。多少喉が痛くなりかけたが気にしない。
この幸福な時間を彼女は精一杯満喫していた。
 しかしその幸福な時間も決して長いものではなかった。気付けばもう夕方になっていた。もうこんな時間かぁ…もっと歌っていたかったな。
「来週の日曜日もここに来てくださいませんか!?」
彼女は大きく声を張り上げ言った。数十秒待ってみたが返事はこない。
「えっと…待ってます!…そしてできればでいいので姿を見せてください!!」
それでも返事は来なかった。彼女は軽くもどかしくなりながらも返事はこないと思い、その場を後にした


[続きを読む#]

1/5ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!