メルヒェン
『不破君、今日も異様に眠たそうだなぁ』
と、会社の上司。
『ぁい、二日酔いでして』
『駄目なんだな、毎晩飲んでちゃ。たまにはシャキッとするんだな』
『ラジャーであります…』
とは言うものの、眠いものは眠い。午前は何とか乗り切るが、昼食後は、ほぼ絶望的だ。
全身、総満腹中枢化した僕に、窓の外から、晩秋の午後の、ぽかぽか柔らかい日差しが優しく注がれる。世界がキラキラ滲んでくる。
悪戯好きな眠りの天使たちが、僕の瞼に乗って重たくする。
『さぁ、午後も、頑張っていくんだな』…
上司の間抜け声が、遠くに聞こえる…
主を失った僕の脳髄は、自由な宇宙を漂い始める。
なんだな なんだな
本棚 なんだな
バンダナ なんだな
曼陀羅 なんだな
サンタナ なんだな
クォーターバックは
モンタナ なんだな
ダンスはやっぱり
ランバダ なんだな
芥川の『蜘蛛の糸』の主人公は…
カンダタ なんだな…
だんだん苦しくなってきた…さようなら…
…ハッ!と目が覚める。脳もバッチリ覚醒した。仕事仕事、頑張ろう。
…勤務終了時刻だった。
この、内から溢れ出すエネルギーを、どこに向ければいいのだろう?
うん、今夜も飲みに行こう。
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