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短編小説
注ぎ込む愛と甘受する愛
時々思うのだ。
もしかして、コイツマジで俺のこと好きなんじゃなかろーか、と。



「拓海、帰るよ」

「うーい」


来るのも一緒。
帰るのも一緒。
飯も、移動教室も着替えも一緒。
そこまでは、いい。


朝は俺を起こしに結構遠い俺んちに来てくれて(俺一人暮らし)おはようのちゅー。
作ってくれるお弁当は超豪華。
ありがとって言うとどういたしましての代わりにちゅー。
帰りは俺んちまで送ってくれて俺の手料理を食ってく。
これは、沢山やってもらってるお返しなんて俺が始めたことなんだけど、初めの方は失敗ばっかだった。
俺は食べなくていいって言ったが気持ちがうれしいとか何とか言って、綺麗に完食するあたり俺への愛が見てとれる。
んでしまいつけにさよならのちゅー。

大袈裟だと思うか?
それで男が男を好きなんじゃないかと思うなんて自惚れてる?

だってあいつ、俺に対しては砂糖吐くくらい甘甘なくせに他人に対してはドライで自分勝手なのだ。
女の子が食べてくださいって持ってきた弁当を「いらね」って突っ返す程度には。
それなんに、非常に不本意ながらあいつはモッテモテ。
あ、この情報いらない。


まぁ兎に角、俺があいつの世界回してます。
いやマジで。



「拓海」

「……ん?」

「明日うちおいで」

「……ん?」

明日って…火曜日だけど。
学校の帰り?
しんどいなぁ…。
いつも通り俺んちじゃだめなの?
てかいつもなら妹がいるからって俺が家行くの嫌がるのに。


「明日学校創立記念日。休み。妹遊びに行ってていない。」

「あ」


そっか。明日休みか。

「迎えに行くから。」


そう言って俺の頭を撫でるフミこと文也。

「や、俺一人で行けるし」

「どーせ寝坊すんだろ」

うっ、と言葉に詰まる。
確かに俺は今までフミに起こしてもらうのが日課で、一人で起きれる自信がないっちゃない。


「………………頑張る」


そう言った俺をフミは横目で見て、はぁぁと溜め息を漏らした。


「昼、過ぎたら襲いに行くから。」

………………え

「襲撃?」

「間違いではない」


えーーーーー………

「じゃ、今日は帰るわ」

「え、飯は?」

「お前眠そうだし。どーせ昨日も遅くまでシンセ弄ってたんだろ?」

「う………」

そのとおりである。
俺のことならなんでもわかる文也くん恐い。


「今日はゆっくり寝ろ」

「…………ごめん」

「…………」

俺が謝ると無言になるフミ。


あ、くる…



“チュッ"


後頭部に腕をまわし、抱きすくめるようにしておでこにちゅー。

それができちゃうくらいの身長差が恨めしい。
いや、断じて俺が低いんじゃない。フミが巨人なのだ。

これもフミなりの優しさ。
ここでいいよ全然、とかなんとか言ってくると俺がもっと申し訳なくなって立場が対等じゃ無くなる。
いや、こっちこそみたいな無駄な会話も長引く。
俺を甘やかしすぎないフミはいつも対応が絶妙で、俺のためになることしかしない。



「じゃ。おやすみ、拓海」


そう言って歩きだし後ろ手に手を振るスマートな男前。

「…………おやすみ、フミ」

悔しいが許すしかないのだ。神に好かれた彼という存在を。
不平等万歳。
来世こそは、男前。

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