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横取りガールとセドリック(魔法)


同じアジアなのにどうしてあの子だったんだろう。同い年で同じ寮の男の子と踊りながら晴れない靄を抱えている私は、この晴れやかなパーティーでは浮いた存在かもしれない。三校対抗試合の代表選手の一人セドリックは入学してからずっと好きだった相手だった。一年の頃から少しづつ話す様に頑張って、他の友達からは『セドリックも絶対由奈の事好きだよ!』なんて言われて、勝手にその気になっていた自分が凄く恥ずかしい存在に思えて仕方ない。故郷の晴れ着をイメージして作った私の着物風ドレスローブ、チョウのチャイナ服風ドレスローブ。どっちも破って燃やして湖に捨ててしまいたいくらい惨めな気持ちだった。きっとセドリックは私を誘ってくれるだろうとか、なんで思っちゃったんだろう。

ノリ気じゃない私に愛想を尽かしたのか、男の子が他の女の子を誘いに行ってしまった。いよいよ一人になった私は惨めにこんな所に突っ立っていたくなんてなくて、大広間を真っ直ぐ横断して部屋に戻る。途中誘いをかけてくる珍しい物好きの男は全員無視した。エキゾチックで良いなんて、アジアなら誰でも良いってことでしょう。さっきと同じような事を考えて角を曲がった途端、部屋に戻ろうなんて思わなければ良かったと後悔した。

「………由奈!?」

セドリックとチョウが、キスしてた。背伸びしてセドリックの胸元に手を当てて、私と同じような黒髪が流れて。驚いてチョウから離れたセドリックの向こうで、チョウが勝ち誇ったような笑顔を見せた。

「邪魔しちゃった?」

声が震えたのは、泣きそうだったなんて可愛らしい理由じゃなくて、むかついたからだ。あんなブリっ子に私は負けたのかと思うとイライラしてしょうがない。前に友達が正直な女はブリっ子には絶対勝てないのよ、と訳知り顔で言っていた意味を改めて知ったような気分。恋愛面では押しが強い、今のは絶対に、チョウからのキスだった。

「セドリック…」

不安そうな声色でセドリックのドレスローブを掴むチョウ。私はなんとなくセドリックの友達が話していた事を思い出した『セドリックは後ろ姿に騙された』、そう言えばチョウは私と同じ髪型をしている事が多かったな、特に、パートナー決めの時期には。そんな噂話を信じられるか、とも思っていたのにあっという間に真実を見つけた様な気になった私は、セドリックがチョウを振り返りもしないのを良い事に挑発するように口を吊り上げた。

「もしも、後ろ姿で間違えただけだっていうなら、今直ぐ正解を抱きしめてキスするべきだと思うわ」

それじゃあお邪魔しました、横をすり抜けて階段を上ろうとしたところで、それは与えられた。かぶりつくようなキスを受けて背中に手を回すと、セドリックの肩越しにチョウが青ざめた顔をしてるのが見える。


(残念ながら、彼は私に夢中みたいよ)


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