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のぞき見千石(庭球)


階段の脇の廊下に腰を下ろしてぼーっと上を見上げる千石を見つけた。邪魔をすべきかどうかちょっと迷って、他の女の子の為にも声をかける事に決める。

「何人見えた?」

「13人…え?」

バッと前を向き直した千石の頭をどついてから隣に腰を下ろし、上を向く事は無く携帯を開いた。千石はさっきまで半笑いだった顔を真っ青にして、何か言い訳的な事を考えているのか視線を素早く彷徨わせている。

「他の子の方が良いとか、そんなんじゃないからね!?」

結局出て来た言葉はそれか、言い分けじゃないよ。そしてどうでもいい。適当にメールを返信していた携帯を返事もせずにポチポチしてると、すっと抜き取られる携帯。

「ちょっと、返してよ」

「好きだよ由奈ちゃん」

んー、と接近する顔を片手で押さえ、もう一方で携帯を取り返そうと手を伸ばす。千石は顔に力を込めながら、携帯を届かないように遠くに掲げている。なんのつもりだコノヤロウ、心の中どころかしっかり口に出して罵りつつ、千石の顔面を押さえている手に力を込める。目を潰すつもりで指を折り曲げようとしたら殺気でも感じたのか、ラッキーの賜物かはわからないけど千石の顔が離れる。
私は逆に距離を詰めて、見た目的には千石を押し倒す感じに襲いかかる。全ては携帯を取り戻すためで、そんな想像をするのはよほど脳内がピンクの人間くらいだろう。

「由奈ちゃんからなんて、ラッキー」

脳内がピンクな人間は自分の真下にいたらしい。聞かなかった事にして携帯を回収し、千石の手が怪しく腰に添えられる前にさっさと降り、スパッツかぁ〜と残念そうに呟く千石の顔面を踏みつけた。

「ぐげ」

足をどけて唸り声を上げた千石を見てみれば、普段通り鼻の下を伸ばしたままニヤリと笑う。あ、やば。呟くなり千石から距離を取ろうと思った私の足(千石を踏みつけた方)、踝辺りをがしっと掴んだ千石がぐいと腕を引く。当然片足を引っ張られれば転ぶしか選択肢は残されてないので、私は尻もちをつく事を想定して痛みに備えた。

「由奈ちゃんげーっと、俺ってラッキー」

テニスと女の子を見る事に使われている動体視力を私を受け止める事に使用して、むかつく笑顔を浮かべてる千石の顔面に向けて、拳を突き出した。

「ぼがっ」

やたら長い鼻の下は人体の急所だと言うのに隙だらけで狙いやすかった。だらしなく気絶した千石をもう一度踏みつけて、聞こえる筈がないけど捨て台詞を吐く。

(私もスキって言ったって他の子の事見るのやめない癖に!)


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あきゅろす。
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