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鳳と結婚(庭球)

「結婚しよう」

付き合ってもない男にそんな事を言われたからというか、そもそも中学生なのにそんな事を言いだしたことにまず驚いた。鳳はもの凄く真剣な顔で私の返事を待っている。鳳とラリーをしていた宍戸先輩は驚いてラケットが手からすっぽ抜け、隣のコートの忍足先輩にぶち当てた。ぶち当たった忍足先輩は「俺の黄金の腰が〜!」なんて言ってるけど、それには誰も反応しなかった、鳳のビックリ発言に注目しすぎて。

「いや、出来ないよ」

私この間14になったばっかりだし、鳳なんてまだ13じゃん。結婚できるまであと5年はあるよ。そもそも鳳と結婚とか意味がわからないのはきっと私だけじゃない。空のボトルが入った籠を抱え直して鳳の横を通過しようとした私に、鳳はなんだかショックを受けた様子で見ている。正直困る。

「なんでだよ!?」

「鳳、落ち着け。俺達はまだ結婚できる年じゃない」

おそらく宍戸先輩からの無言のヘルプ信号を受信した日吉が、汗を拭いながら歩いてくる。宍戸先輩のもっと急げという視線を受けても、歩いてくる。

「あ、そっか…じゃあ婚約しよう」

「ていうか、なんでそうなったのか誰か説明して」

今の今まで私が好きだとか、そんな素振りはなかったじゃないか。鳳はわかりやすいんだから、そんな素振りがあれば絶対わかる自信がある。そして今までそんな素振りが無かった事にも自信がある。

「長太郎、由奈の事好きだったのかよ?」

宍戸先輩が僅かに冷静を取り戻したような顔をして近付いてくる。ラケットは回収されていないので、忍足先輩も文句を良いながらついでと言うように寄って来た。後で跡部先輩に怒られても私は無実だと主張したい、通じるかは疑問。

「いえ、直感とでも言えばいいんでしょうか…由奈と結婚しなきゃって思って…」

訳がわからない。本当に訳がわからない。結婚しなきゃってどんな強迫観念なの。しかも私が好きなのかって質問は否定だったし…。

「好きでもない子と結婚しても幸せにはなれないと思うよ鳳、だから結婚はできません、婚約もしません」

「大丈夫だよ、俺…好きになれると思うんだ!!」

良くわからない鳳の求婚を断り続けて、その日の部活は終わった。気が付かないうちに先輩達も日吉も練習に戻ってて、私と鳳だけ部長に怒られた。


(なんか色々納得いかない)

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あきゅろす。
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