[携帯モード] [URL送信]

shortshort
ハリーと選択肢ミスった女(魔法)

はじめ、生まれ変わったと気が付いたとき。しかもそれがあの有名な魔法の世界だと気が付いたとき、期待した。
夢小説みたいに私はヒロインで、例えば逆ハー、例えば闇陣営、そういう物語になりそうな事を期待した。

結局のところ私はグリフィンドールじゃなかったし、スリザリンでもなかった。見下されがちなハッフルパフで、セドリックとは話したことも無いことはないけどまるで親しくもない、傍観者にもなるにもハリー達は本当に遠目で見る程度。原作には書かれていない、もしいても記憶に残らない程度の友達をつくり、ただ知っている世界にいるだけの存在にしかなれなかった。
考えてみれば、前世も含め私がスポットライトを浴びたことなんて無かったのだから、それも当然かもしれない。
そして私は現実を受け止め、ただもしかしたら本当に起こってるかもしれない物語を知っているだけ一般生徒として、ホグワーツに溶け込んだのだった。


だからDAに誘われた時、何かの間違いだと思った。ハーマイオニーは人違いではないといって、それから申し訳程度に無理にとは言わないけれど、とも付け足した。
ハッフルパフ生として一番介入しやすかった四年目をスルーしていたのに今更ながらこの流れに関わって良いものなのかと悩みつつも、誘われるままにハーマイオニー特製の羊皮紙に入団のサインをしていた。



.


「アー、由奈、調子はどう?」

「えぇ、良いわハリー、あなたは?」

「ぼ、僕も良いよ、絶好調さ!」


DAに通ううちに、なにやら誤解されているらしいと気が付いた。主に主人公達に。
私が、ハリーに恋してると思われているようなのだ。しかも面と向かって指摘されないので、誤解だと言うことも出来ない。
このぎこちないハリーの態度のせいで、チョウからトゲトゲ攻撃をくらっているとしても、私から「ハリーに恋してませんけど」なんて言えない。頭のおかしい人扱いになりかねない。


「あの、由奈…?」

「……なあに、ハリー?」

DAの後、もじもじしたハリーに話しかけられて、驚きのあまり一瞬息がつまる。視界の端でロンがハーマイオニーに引きずられながら部屋を後にしていて、チョウが眼光鋭く此方をうかがっているのは、ウィーズリーの双子に不自然にぶつかられ追い出された。

もしかしてこれはなんらかのフラグかもしれない。
噂では去年、ハリーはちゃんとチョウをダンスパーティーに誘って(断られて)いるし、今年も順調に距離を縮めている事だろう。
ならこれはハーマイオニーの作戦で、ハリーの事を好きな私とハリーを二人にして、私が勢い余って告白→玉砕の流れをつくり、チョウに嫉妬させつつのハピエン狙いとかかもしれない。きっとそうだ。


「今度の休暇なんだけど、もうその……」

「休暇、ホグズミード行きの日?」


もうチョウと約束したから君とは行けない、とかだろうか、誘ってないけれど。


「そう!そのホグズミードなんだけど、一緒に行く相手は決まってる?」


あくまでも言わせる作戦なのかもしれない。私は不本意ながら腹を決めた。ちょっとでも原作にかかわれた代償と思えば無駄に振られる事など安いものだろう、たぶん。


「あの、ハリー?」

「な、なに?」


ハリーがちょっと身構えるように身動ぎする。私はなけなしの演技力を総動員して、さらにちょっと上目遣い気味にハリーを見詰めた。


「もしかして、なんだけど……私を誘ってくれてる?」


さすがにこのタイミングで好きなの!とは持っていけないので、ワンクッション入れる。ハリーがなにかモゴモゴ言っているのだけど、うまく聞き取れないのでいったん置いておいて、一度ハリーから視線を外す。


「だとしたら、嬉しいな……私、ハリーのこと、好きだから…」


はにかみつつ、ハリーの鎖骨あたりで視線をさ迷わせる。さすがに恥ずかしすぎて見詰めながらは言えなかった。
まぁミッションは完遂したので許してほしい。若干ドヤ顔になりそうなのを物理的に手で押さえつけ、ハリーの返事を待つ。
ハリーはというと無言で、さらに微動だにしない。おかしいなと視線を上げると、茹で蛸状態のハリーと目があった。


「……ハリー?」

「あ、」

「えっと、私」


なにか間違えた?とは言えないので適当に返事はいらないから的な事を言って退散しようと思った直後、ハリーが動いた。


「僕も好きだ!」


意外とがっしりした胸板である。そういう問題ではない。


「ずっと、君だけが僕を信じてくれてた…」


まるで心当たりがない。ないけどたぶんいつだってハーマイオニーとロンは信じてたんじゃないだろうか。なんのことだかわからないけれど。


「ハリー……」


どなたかと勘違いなさってるのでは?とでも言おうとして、私は口をつぐんだ。ハリーの頭の向こうに見付けたものに驚いて。ハリーは私が不自然に黙ったせいで私の視線を追い、それに気がついてしまった。ぽっとハリーの頬か色付く。


「ヤドリギだ…」


そして完全に触れ合った唇に、私は思うのだった。
どうしてこうなった、と。





end.

[*前へ]

10/10ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!