[通常モード] [URL送信]

あなたの10題(泉パロ)
05:あなたの攻防

「…痛っ」
「どーした?」


小さく悲鳴を上げたつもりなのに、孝介はすぐにやってきた。
…さすが、獣耳。


「包丁で指切っちゃっただけ。大丈夫」


笑って人差し指を見せた。
少し血が出てるけど、舐めとけば平気だ。
孝介はあたしの人差し指をじっと見つめた。


「ちょっと待ってろよ」
「え?うん」


きょとんとして待っていれば、孝介は救急箱を持ってきた。


「そんな、いいって!自分で出来るし…」
「まあ待ってろって」


あたしの手を持って、孝介はあたしの人差し指を口に含んだ。
孝介の舌が傷口を舐めていく。
何だか落ち着かなくて、恥ずかしくて、顔から火が出そう。
孝介の舌は、器用だ。
だから余計に…なんかイロイロ、恥ずかしい。


「こ、孝介…」
「何だよ?」


あたしの指を咥えたまま、孝介は顔を上げた。
か、可愛い…!
なんて思った自分が情けない。


「あーいや…なんでもない」


すぐに孝介から目を反らした。
上目遣いになった孝介が可愛かったです、なんて、口が裂けても言えない。
孝介は可愛いと言われるのが嫌いだ。
何故って、孝介は結構可愛い顔してる自分の顔に、コンプレックスを持っているから。
男が可愛いなんて言われたくないらしい。


「…なんか失礼なこと考えてんだろ」
「え!?いや、別に?」
「ぜってぇ考えてたな。言え」
「なんにもないってば!!」


孝介が言い当てるもんだから、あわあわと慌ててしまう。
あたし今、余計に怪しいってことになってるんだろうな…。


「何考えてたんだよ?」
「いいじゃん、考え事くらい好きにさせてよ!」
「…まさか可愛いとか思ったんじゃねぇだろーな?」
「…え?」


ポカン、とした後に、しまった、と思った。


「ふーん…?」
「いや、だって、上目遣いだったし…ね?」
「やっぱり思ったんだな」
「…あ」


じりじりと孝介に攻められる。
うわ、絶体絶命。


「こうなったら…えいっ」
「おわっ!?」


あたしは両手で孝介の猫耳を掴んだ。
ふにふに、と触る。


「やめろ!くすぐった…ふはははっ…やめろって!」
「やめないもーん」


最近発見した、孝介の弱いところ。
生えた猫耳。
ここを触られると、どうやらくすぐったいらしい。
格好良くて、とっても強いのも孝介のいいところだけど、たまには弱いところもあったっていいじゃない?



[*前へ][次へ#]

6/7ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!