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身勝手なわたし10題(獄寺夢+10)
03 愛も夢も希望もすべて、捨てれるのなら好きになる

時計の針の音がやけに耳につく。
名前が放った言葉で、俺たちは完全にフリーズしていた。
先に動いたのは、名前。


「ナポリタン、冷めちゃうよ。」
「お、おう。」


って言っても、こんな辛ぇもん、俺には食えねぇけどな。
目の前でナポリタンを食べる名前を眺めた。
随分と大人びた。
髪も伸びた。
何より、雰囲気に、『大人の女』みたいなオーラが加わった気がする。
喋り方は昔と変わらないって、面白いよな。
目の前に座っている名前は、俺の知っている名前だ。
間違いない。
こいつにいったい何があったんだろう。
嫌いだといわれても、俺はやっぱり名前が好きだと思った。
愛おしいと思った。


「なあ名前。」
「…何?」
「お前はひとりぼっちじゃねぇだろ。俺がいる。」
「…。」
「これから、俺はずっと名前の傍にいる。」
「…なんなの隼人。隼人らしくないよ。」


消え入りそうな声だった。
お前が一番らしくねぇじゃねぇか、と思った。


「そういえば隼人、」
「何だよ。」


突然ひらめいたかのように、名前が言った。
フォークを置いて、真っ直ぐ俺を見た。


「隼人の夢って何?」
「夢?」
「うん、夢。」


名前は微笑んでいた。


「夢…。」


そう言って、腕を組んで天井を見上げた。


「希望でもいいよ?」
「希望…。」


そう言われて、思いついたのは。


「やっぱり、十代目のお役に立てることだよな。右腕として、お役に立てることは俺の喜びだからな。」
「へぇ…。そう言えば、ツナ元気?」
「ああ。十代目として、日々頑張っていらっしゃるぜ。」
「ツナ頑張り屋さんだもんねぇ」


少しだけ、楽しそうに名前が笑う。
それだけで、俺は嬉しかった。
そんなことを言えば、きっと、他の皆に笑われんだろうな。


「なあ。」
「何?」
「どうしたら名前はまた俺のことを好きになってくれるんだ?」


真剣に聞いた。
また名前は驚いたように目を見張った。
腕を組んで、考え込む名前。
しばらくして、名前は口を開いた。


。」


このときほど、名前のことがわからなかったときはない。



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あきゅろす。
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