身勝手なわたし10題(獄寺夢+10)
01 そんなものいらない。愛だけちょうだい。
久しぶりの長期休暇が出た。
期間は一週間。
何でも、
「ボンゴレも随分安定してきたし…獄寺くんもたまには休んだら?休んでも、罰は当たらないよ。」
とかなんとか。
さすが十代目だぜ。
俺を気遣って十代目が下さった長期休暇は、日本へ行くことに使おうと決めた。
日本に、会いたいヤツがいる。
そいつは少し意地っ張りで、すぐにヘソを曲げる。
けど誰よりも優しくて、傷付きやすくて、守ってやりたいと思えるヤツ。
中坊のときから付き合い始めて、喧嘩も沢山したが、関係はずっと続いている。
名前、元気にしてんだろうか。
十代目に付き添ってイタリアへ飛んだ俺を送ってくれて以来、会ってない。
電話はときどきしたが、時差があるため短い時間でしかなかった。
「びっくりするんだろうな。」
少し笑いながら、日本の地に降り立った俺は、名前の電話番号をプッシュした。
夜道にレンタカーを走らせる。
「ち、右ハンドルは慣れねーな。」
向こうじゃ左ハンドルだし。
そんなことを思っていると、名前が住んでいるマンションが見えた。
近くへ寄っていく。
マンションの前で、ボーッと立っている名前を発見。
クラクションを鳴らした。
名前はその音に気付き、車に駆け寄ってきた。
「わー、本当に隼人だ!」
嬉しそうなその言い方は、昔となんら変わっちゃいねぇ。
けど、姿形は昔と違っていた。
大人っぽくなった。
そう思ったら、なんだか恥ずかしくなって、名前から目を反らした。
「隼人?」
「あー…なんでもねぇよ。久しぶりだな、名前。」
「そうだねー。何年振りだろ?」
助手席に座ってクスクス笑う名前。
「それにしても、びっくりしたんだから。いきなり朝、電話で『帰ってきた』なんて…。おまけに、夜はレストランで食事しようなんて、本当、びっくりしすぎてわかんなくなっちゃったよ。」
「そーかよ。それにしても、お前、よく喋るようになったな。」
「え!?そう?…隼人は、格好良くなったね。」
「おま、な、何言ってんだよ…。」
「え?いや、なんか大人っぽくなったなあって。」
にこにこ笑う名前。
それはお前の方だろ、そう思ったが言わなかった。
レストランでも、名前はよく喋った。
こんなに喋るヤツだったか?と思ったが、あまり気にしないことにした。
車に戻り、ポケットを探る。
「美味しかったね、隼人。」
「…。」
「…隼人?」
「あのな、名前。その…俺と結婚してくれねぇか?」
そう言いながらポケットの中から指輪の箱を取り出した。
よかった、言えたぜ。
これを言うために、日本に帰ってきたようなもんだ。
バクバク、俺らしくもなく心臓が妙に高鳴る。
名前は驚きで目を丸くしていたが、少しずついつもの微笑みに戻っていった。
そして、彼女の返事は驚くべきものだった。
「そんなものいらない。愛だけちょうだい。」
そのときの俺の顔は、たぶん、とんでもなくアホ面だったと思う。
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