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やっと(+10)


「ねー、スクアーロー」
「隊長と呼べぇ!隊長と」
「私、ベルが考えてることがわかんない」
「…はぁ!?」


此処は、ヴァリアーの本部の作戦会議室。
さっきまで、次の暗殺の作戦を考えていた場所である。
作戦会議も終わり、スクアーロがたまたまホワイトボードを消したり、机を片付けていたりしていたから、私もそれを手伝ったのだ。
で、うまいこと2人きりになれたわけで。
最近悩んでる、ベルのことについて聞いてもらおうと思った。


「お前ら、10年以上一緒にいるだろうが」
「だからこそ、よ。わかんないの」
「わかんないだとぉ?」
「うん…。思えばね、好きとか言われてないの」
「…お前ら、付き合ってるんじゃなかったのか?」


怪訝そうに私を見るスクアーロ。
うん、付き合ってると思うよ。
たぶんね。


「付き合ってるけど…。ベルが、10年前、『付き合え』って言っただけなんだよね」
「なんだぁそれはぁ!?」
「私だって聞きたいよ。付き合えって、付き人として付き合えってこと?恋人として付き合えってこと?」
「俺に聞くなぁ!ベルに聞けぇ!」
「そうなんだけど…」


10年前、ある日突然、ベルは私に告白した。
『好き』とかそんな言葉は無く、本当にただ、『付き合え』って言われただけだった。


「付き合えよ。俺、王子だから。拒否権は無いぜ」


そもそも私に、拒否するつもりは無かった。
だってずっと前から、私はベルのことが好きだもん。
だから、ずっとベルと『付き合って』きたけど…。
思えば、『好き』って、言われてないじゃん。


「ね、ベルって、私のことをどう思ってるのかな?スクアーロ知らない?」
「なんで知らなきゃいけねーんだぁあ゛」
「じゃ、なんとなく、見ててわかったりとかしない?」
「知るかぁあ゛あ゛あ゛!」
「そうだよね。そりゃ、本人に聞くのが1番なんだけどさ」


もし、本当は付き人として付き合えだったとしたら、嫌だし。
知らない方が良いのかもなんて、思ったりするんだよね。


「だからね、ベルが何考えてるのかわかんないの」
「ベルだけじゃなく、誰だって何考えてるかなんて、わからんだろぉ」
「そう?スクアーロはわかるよ」
「んだとぉ?」


米神の辺り見てれば、今怒ってるとか、怒ってないとか、わかるんだよね。
と、心の中で呟いた(今そんなことを言えば、確実に殺られる…!)。


「う゛お゛ぉ゛い゛、今何考えてたぁ!?」
「え!?べ、別に」
「目線がうろうろしてるぞぉ!」


私とスクアーロは、悪ふざけをして戯れていた。
そのときだった。


「ししっ。何やってんの、名前?」
「あ、ベル」
「う゛お゛ぉ゛ぉ゛い゛、俺もいるぞぉ」
「こっち来い、名前」
「最後まで無視かぁ!?」


腕を引かれた。
思ったよりも強い力で、私はそのまま、ベルの胸の中に飛び込む形になった。
突然の出来事に、頭がついていかない。


「スクアーロ、まだそこにいんの?」
「言われなくても、すぐ部屋に帰るつもりだぁ゛!」


え、スクアーロ、行っちゃうの?
なんか、スクアーロと話してた内容が頭にあって、ベルと顔が合わせづらいんですけど。
と、心の中でSOSを出したけど、健闘空しく、スクアーロはそのままいなくなってしまった。


「名前は俺のだから。アホのロン毛隊長の所に行かれるの、嫌なんだけど」


ギュ、と強く抱かれる。
トクトクトク…、とベルの心臓の音が聞こえた。


「王子としたことが、言うの忘れてたよな」
「何?」
「名前のことが好きだぜ。だから、付き合えよな」
「ベル…」
「返事は?」
「…勿論、私だって、好きだよ」


いつも冷静にしているように見えて、やきもち妬きなんだ、ベルって。
初めて知ったな。
スクアーロに相談してよかったかも。



end.(2010,9,5)



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