[鬼灯の冷徹]補佐の補佐
お土産と悪意と礼儀
貴「んーっ!!」
昨日桃源郷から帰ってきてすぐ寝てしまった怜は大きくけのびをして起き上がる。
ペタペタという足音を立てて身支度をしに行く。
鬼「やっと起きましたか。」
貴「…おはようございます。すみません寝過ごしました。」
うっすらとしか空いていない目で鬼灯の姿を捉えると軽く頭を下げいう。
貴「……今日なんかありましたっけ?」
鬼「現世の報告書に間違いがないか確認してくださいと昨日あなたが寝てから言いました。」
貴「そんなん聴いてるわけないでしょうが。」
アホじゃないんですか…と呟く。
貴「というかそれならそうと起こしてくれればいいじゃないですか。自分だけさっさと起きていっちゃう鬼灯さんも鬼灯さんでしょう。」
鬼「疲れてると言っていたのでもう少し寝かせようと思って起こさなかったんですよ。……まぁ、永眠して欲しいと思ったんですが。」
貴「最初のちょっとした感動返してください。」
ジャバジャバと顔を洗う怜にタオルを渡す鬼灯。
貴「あ、どうも」
鬼「いえ………シロさんが言ってた通り人の身支度って見てしまいますね。」
貴「なんですか、それ。」
タオルで顔を吹きながら尋ねる。
鬼「この前シロさんが言ってたんです。」
貴「そうですか。」
その言葉を最後に会話がなくなった。
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貴「………。」
鬼「………。」
貴「いつまで見てるんですか?」
鬼「終わるまでですけど?」
貴「気になるんですけど…」
お気になさらず…といい時計に目を向ける鬼灯。
貴「(お気になさらずって…)…なんか、部屋ごちゃごちゃしました?……着替えをとるの一苦労なんですけど…!」
鬼「大して変わってないでしょう。あなたは着替えが多いからですよ。」
近くに置いてある本を手に取りながらいう。
貴「そりゃあ着替えは確かに多いですけど…ね…!」
ググッと本の山の奥にある常装に手をのばす。
鬼「……背が小さいからじゃないですか?」
貴「うるせぇ、変人。」
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貴「……部屋、片付けよう…。」
はぁ…とため息をもらしながらいう。
鬼「本の場所とかわかんなくなると困るんですけど。」
貴「なら自分で片付けてください。ただでさえ着替えるの大変なのにあれじゃあ着替える前からヘトヘトです。」
困ったようにいう怜に大してそうですね…と小さく言う鬼灯。
貴「まぁ、鬼灯さんの収集癖は前からですけど、なんか一気に増えたような気がします。」
鬼「2年もいなければそうでしょう。」
貴「…2年の間にクリスタルのヒトシくん2個になってますし、モンゴルの民族衣装まであったし…何なんですか?」
鬼「あたりました。」
そういう鬼灯をみて、諦めたようにそうですか、良かったですね。とだけ言った。
閻「おぉ、遅い目覚めだったね〜」
貴「すみません、寝過ごしました。」
閻「いいのいいの!ずっと現世にいたから疲れてたっぽいからね!」
貴「ですが、疲れたという理由で仕事は投げ出せません。」
やってしまったというかのような顔でいう。
閻「真面目だね〜」
貴「誰かさんがもっと頼もしければ真面目である必要なないんですけどね。…クソ閻魔(ボソ」
閻「本人居る前でそれが言えるのってすごいと思うよ…」
貴「さて、もうこんな時間ですが仕事をしないと…」
そういい歩き出す。
鬼「では、これの確認をお願いします。」
貴「はい。」
鬼灯から報告書と書いてある紙を受け取る。
貴「あ、そうだ。」
鬼「どうしました?」
貴「現世のお土産を渡すの忘れてました。
閻「え?お土産買ってきてくれたの!?」
やったーと喜ぶ閻魔大王。
貴「はい、えーっと大王にはこれを」
閻「わ〜、ありがとう!」
ガサガサと袋からお土産を取り出す。
閻「……これさ…」
貴「なんですか?いいでしょう。それ」
怜のいうそれとはオレンジのバカでかいTシャツに『ハゲたメタボ』とだけ書かれたものだ。
閻「ふ、太ってるかもしれないけどハゲてはないよ!!」
貴「いつかハゲますよという意味を込めてです。」
閻「やめてよ!!…もう、悪意しか感じられないよ。」
貴「失礼な。一応上司だから礼儀として一応買ってきたんですよ、一応。買ってきただけ偉いと思いますけどね。」
まったくと言いながら閻魔を見る。
閻「買ってきた理由それ!?聞きたくなかったよ!一応一応言い過ぎだし!!」
貴「うるせぇな……あ、鬼灯さんはこれです。」
鬼「ありがとうございます。」
貴「モノが増えると良くないので食べ物にしました。」
鬼「食べ物ですか…(ガサッ」
鬼灯が袋から取り出したのはわさび10本、辛子10本、七味唐辛子10本とプリンだった。
貴「鬼灯さんには日頃の感謝の気持ちを込めて鬼灯さんの好物をたーっぷり買ってきました。」
嬉しいですか?と見下しながらいう。
鬼「ええ…ありがとうございます。……お前が食え。」
ガッとわさびを口に突っ込もうとする鬼灯。
刀を構える怜。
閻「あー…始まっちゃった。」
そのあと閻魔殿がボロボロになったのは言うまでもない。
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