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魔法少女リリカルなのは 高町ヴィヴィオの憂鬱
第8話 とある少女の挑戦!
〜首都クラナガン・スポーツジム前〜

「ヴィヴィオ、大丈夫?」
「う・・・うん!」

心配そうに声をかけるコロナに、緊張しながら答えるヴィヴィオ

そこに

「ヴィヴィオ〜!」
「あれ? スバルさん・・・それに・・・」

声のする方を見ると、手を上げながら近づくスバルとあと二人

「ほらっ! ちゃっちゃと歩く!!」
「わ〜ったから、引っ張んなって!!」
「ティアナさんに、お兄ちゃん!?」

ティアナと、そのティアナに首元を引っ張られながら歩いてくるハヤトがいた

「お〜っす、ヴィヴィオ。あとコロナも」
「はい! お兄さん!」
「なんでスバルさん達が?」

挨拶してるハヤトとコロナを尻目に、ここにいる理由を聞いてみるヴィヴィオ

「ノーヴェから聞いたのよ。今日、先輩と組み手するって」
「ちょうど、お休みだし。ヴィヴィオの応援にね〜?」
「そうなんですか・・・お、お兄ちゃんも?」

そう言って、ハヤトに視線を向けるヴィヴィオ

「ん? まぁな・・・直接聞いてたしな・・・」
「そうなんだ・・・」

ぶっきらぼうに答えるハヤトに少し嬉しそうな顔になるヴィヴィオ

「悪い、待たせたか?」
「あ・・・綾人さん!!」

後ろからすっかり聞きなれた声が聞こえ振り向くと、綾人が近づいてきていた

「悪いな・・・せっかくの土曜日なのに・・・」
「いえ! こちらこそ、今日はよろしくお願いします!!」

謝る綾人に、そう言って頭を下げるヴィヴィオ

「あの・・・はじめまして!」
「ん?」

ヴィヴィオの横から声をかけるコロナ

「コロナ・ティミルです! ヴィヴィオとは、一年生のころからのお友達です!!」
「そうか・・・はじめまして、天童綾人だ。よろしく」
「はい!」

互いに自己紹介をすませる綾人とコロナ

「で・・・なんでスバルやティアナがいるんだ?」
「その、ノーヴェ達に聞きまして・・・」
「ふ〜ん・・・ま、いいか・・・」

別段気にすることでもないのでスルーする綾人だが

<スバル、ティアナ・・・>
<<はい?>>

念話で二人に呼びかける

<後で、ちょっと話がある>
<話・・・ですか?>
<ああ・・・ハヤトのことでな>
<<!!>>

綾人の言葉に二人が目を見開く

<わかりました・・・>
<はい・・・>

二人も真剣な顔で頷く

「師匠〜!!」
「お?」

綾人の後ろから声が聞こえ、走る音が近づいてくる

「おまたせしました!」
「大丈夫だ・・・だが『師匠』はやめてくれ・・・リオ」
「嫌です!!」

綾人の頼みをきっぱりと拒否するリオ

この返答は予想できていたため、綾人も若干諦めている

「あ、リオ〜!」
「さっきぶり〜」
「ヴィヴィオ! コロナ!!」

そして、ヴィヴィオとコロナにも声をかける

「あれ? リオ・・・二人と知り合いなのか?」
「あ、はい! ついこの間、友達になりました!」
「そうか・・・なんだ・・・」

今日紹介しようと思っていたが、すでに友達になっていてちょっと残念な綾人

「まあ、いいか・・・さて、全員揃ったし、行くか・・・」

面子を確認した綾人が提案しようとすると・・・

「ヴィヴィオ〜!」
「あ、ママ!」

なのはが手を振りながら近づいてきていた

「よかった、なんとか間に合ったね」
「お仕事は?」
「うん。もう終わったよ? だから、ヴィヴィオと綾人君の組手を見てみようってね?」

ウィンクしながら答えるなのは

「それに・・・はい」
「あ・・・」

なのはは首から下げていたレイジングハートをヴィヴィオに手渡す

「“そっち”の方が、全力でやれると思って」
「うん! ありがとママ!!」

笑顔で受け取り、しっかりと握りしめるヴィヴィオ

「それじゃ、改めて行こうか・・・」

それを見ていた綾人は、再び提案して全員で中に入っていく・・・

〜スポーツジム・アリーナ〜

「ヴィヴィオ、自信は?」
「う〜ん・・・どうかな・・・でも、精一杯やるよ!」

大人モードになり、準備運動をしているヴィヴィオ

コロナにも笑顔で答える

「ヴィヴィオ、まずは全力でぶつかってみることだよ?」
「うん!!」

なのはからのアドバイスにしっかりと頷いて答える

「おまたせ・・・」
「あ・・・」

そこに、着替えた綾人がゆっくりと入ってくる

「準備はいいかな?」
「はい!!」
「よし・・・・・・すいません、ここ使います・・・」

他の練習者に声をかけ、アリーナに入る綾人とヴィヴィオ

そして、距離をあけて向かい合う

「ルールは・・・・・・強化含む一切の魔法の禁止で、時間無制限一本勝負・・・いいな?」
「はい!!」

綾人は右手を腰にすえて左手を前で構え
ヴィヴィオは両手を顔のそばで構える(所謂、ファイティングポーズ)

(変わった構えだな・・・)

綾人の構えにそう思ったヴィヴィオ

「さあ・・・来い!」
「はい!!」

綾人の言葉を合図に突っ込むヴィヴィオ

「やぁ!!」

トップスピードで綾人との距離を詰め、右のストレートを放つ

「ふっ」

しかし、綾人は軽く弾く

「はっ! やぁ!」

ヴィヴィオはひるむことなく攻撃を続けるが、綾人はその全てを捌いていった・・・それも左手一本で


数分間攻撃を続けていたヴィヴィオだが、呼吸を整えるため、一度綾人と距離をとった

(ぜ・・・全部捌かれた・・・)

フェイントを織り交ぜながらの攻撃も、すべて完璧に捌ききった綾人に、ヴィヴィオも驚くしかない


【見学者SIDE】


「ほぇ〜・・・すごいね〜」
「でしょ? しかも、あれでまだまだ全力じゃないんだよ?」
「確かに・・・」
「前は、もっとすごかったしね・・・」

綾人の動きに驚くコロナにどこか自慢げに言うリオ

そして、久しぶりに見る綾人の戦闘と、過去の自分達との模擬戦を思い出しているスバルとティアナ

「う〜ん・・・綾人君相変わらずだね・・・」
「どういう意味ですか?」

なのはの一言にコロナが質問する

「うん・・・綾人君、基本的に自分からは攻撃しないんだよね・・・相手の力量をしっかりと図るためにね・・・」
「へぇ・・・」
「相手に思いっきり攻撃させて、その癖を見極めて、修正する部分とか伸ばす部分を見つけるんだよね・・・それも的確に・・・」

何度か見ていた綾人の教導を思い出しながら言うなのは

主に生徒とぶつかりながら教えているなのはとは違うので印象に残りやすい

「お? 次は先輩が動くのか?」

ハヤトの言葉に、全員が注目する

【綾人SIDE】


「さすがだな・・・攻撃のキレはいいし、威力も申し分ない・・・」

なのはの言う通り、攻撃を受けながら分析していた綾人

「さて・・・それじゃ、今度はこちらから行くぞ?」
「!!」

綾人の言葉に、慌てて両手をクロスさせ防御の態勢になるヴィヴィオ

「はっ!!」

ヴィヴィオの手の交差した点を正確に打ち抜く綾人の掌打

「あぅっ!?」

防御態勢のまま後ろに飛ばされ、足をすりながらなんとか停止した

「へぇ・・・止めたか・・・」

右手を突き出したまま、感心する綾人

しかし、ヴィヴィオは止まったまま動かない

「どうした? もう終わりか? まだ一撃だぞ?」

綾人の呼びかけにも答えない

しばらく経った後、パッと顔を上げるヴィヴィオ
すると、ものすごい笑顔だった

(・・・すごい・・・すごい!・・・すごい!!)

綾人の攻撃を受け、そう思ったヴィヴィオ

「綾人さん! 行きます!!」
「ああ!」

改めて構え直すヴィヴィオに答える綾人

「やぁぁぁぁ!!」

再びトップスピードで突っ込みもう一度右ストレートを放つ

綾人も弾く構えを取るが

「はぁ!!」
「!?」

弾かずに顔を反らして回避する


【見学者SIDE】

「攻撃を・・・」
「回避した?」

今まで完璧に攻撃を“弾いて”いた綾人が、初めて“回避した”ことに見学者全員が驚く

「なんで?」
「ヴィヴィオの攻撃は・・・さっきと同じなのに・・・」
「こりゃ、面白いかもな」

スバルもティアナもハヤトも気付かなかった
ヴィヴィオの攻撃の変化に

「ヴィヴィオ・・・その調子・・・」

ただ、なのはだけは気づいていた・・・

【綾人SIDE】


(驚いた・・・攻撃が“加速”した・・・?)

綾人自身も驚いていた

ヴィヴィオの攻撃が、寸前で速度を上げた事に

(しかも魔力補助無しで・・・・・・この子は・・・末恐ろしいな・・・まったく・・・)

思わず苦笑いする

(それなら・・・)

あることを決め、一度構えを解く綾人
ヴィヴィオも不思議に思いながら見つめている

「ヴィヴィオちゃん・・・一つ謝ろう・・・」
「え?」
「すこし・・・舐めてた・・・君の実力を・・・伸びしろを・・・・・・さすが、“魔王の娘”は伊達じゃないな・・・」

小さく笑いながら、そういう綾人

最後の部分に反応したなのはからオーラが放たれ、スバル達が必死に抑えているのだが・・・

「だから・・・お詫びといってはなんだが・・・少しだけ、“本気”でやろう」
「!?」

綾人の一言に、場の空気が変わる

その空気になのはも気づいて動きが止まった


改めて構えを取り直す綾人だが、ヴィヴィオはそれに首を傾げる

「左右・・・逆・・・?」

先程までは“左手を前に出し、右手を腰に据えて”いた綾人だったが
現在は“右手を前に出し、左手を腰に据えて”いた・・・

「思い出してみな? 俺の“利き腕”を・・・」
「あ!!」

ヴィヴィオは思い出し声を上げる

それは、先日一緒に夕食を食べたとき・・・

「俺は・・・・・・“左利き”だ・・・」

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