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魔法少女リリカルなのは 高町ヴィヴィオの憂鬱
過去編その1 とある新人とのファーストコンタクト
〜第一管理世界『ミッドチルダ』北部・第四陸士訓練校〜

若い魔導師達が日々、それぞれの夢にむかって厳しい訓練を続けている

そんな訓練校の廊下に、1つの足音が響く

「お〜い! 天童〜!!」
「・・・ん?」

その足音の主は、目的の人物に手を振りながら駆け寄っていく

「こんなとこにいたのかよ〜・・・まったく探したぜ?」
「別にいいだろ?・・・それで、何の用だよラウス? つまんない要件なら・・・」
「なに・・・?」
「・・・たたっ斬る」
「ひぃ!!」

極めて低い声である一点を見ながらそう告げる青年、天童綾人と脅され数歩下がってビビる青年“ラウス・ボート”

「ま、まあ、そんなにつまんなくもないって・・・今度の“合同訓練”のこと・・・なんか聞いたか?」
「いや・・・興味も無いしな・・・」

ラウスの質問にそれだけ答える綾人

「そうだろそうだろ〜・・・そこで、俺の仕入れてきた情報がだな・・・」
「どうでもいいな・・・じゃあな・・・」
「って、聞けよ!!」

ラウスが話しだそうとするのを無視して歩き出す綾人
後ろから声がするが、まったく気にせずに去っていく


それから三日後・・・


大型の訓練場に集合した綾人達

「よーし! 今日は以前から連絡のあった下級生との合同訓練だ! 各自、指定のペアとチームを組み、この一週間ともに訓練を受けていくこと! いいな!!」
[はい!!]

指導官の言葉に返事を返す訓練生達

「それでは、一時解散!! 各自の担当するペアのもとへ行くように!!」

それだけ伝えると、指導官は準備をしに戻っていった


「天童! お前のペアって誰だよ?」
「ふむ・・・ペアじゃないな・・・“トリオ”みたいだな」

渡された資料を見ながらラウスにそう答える綾人

「トリオ? 珍しい〜・・・」
「ま、俺も“シングル”だしな・・・ちょうどいいのかも」
「あ・・・悪い・・・」

綾人の一言に頭を下げるラウス

「なんでお前が謝るんだ?」
「いや・・・だってよ・・・お前が“シングル”になった原因って・・・俺じゃん?」
「・・・・・・別にお前が原因じゃない・・・遅かれ早かれバレることだったんだ・・・仕方ない」
「そうだけど・・・」
「なら、その話はもうナシだ・・・いいな?」
「・・・わかったよ・・・」

綾人の言葉に、渋々ながらも話を中断するラウス

「そろそろ時間だな・・・それじゃあな?」
「おう! また昼にな!!」

そう言って別れてそれぞれの担当の元へ向かう綾人とラウス



「ここ・・・だよな?」

指定された集合場所に来たのだが、誰も居なかった
すると・・・

「ほら! もう集合時間過ぎてるんだから急いで!!」
「わ〜ってるから、引っ張んなって! 腕が取れる」
「だったら、走んなさい!!」
「ハヤト! 早く〜!!」

遠くから、喧嘩のような声が近づいてきた

「「「あ・・・」」」
「・・・・・・」

そして、ほぼ無表情の綾人を見つける3人

「・・・お前等が、32班?」
「あ・・・は、はい!! 遅れてすみませんでした!!」
「すみません!!」
「すんまそん」

綾人の言葉に、慌てて謝る2人の少女と反省してるのかしてないのかわからない謝り方の少年

「・・・・・・まあ、別にいいけど・・・名前は?」
「あ・・・ティ、ティアナ・ランスターです!」
「スバル・ナカジマです!」
「ハヤト・ロックウェルっす」
「・・・天童綾人だ」

元気よく自己紹介してくる3人に綾人も短く自己紹介を済ませる

「・・・それじゃ、さっさと行くぞ・・・」
「あ、あの〜」
「ん?」

歩き出そうとする綾人に話しかけるスバル

「その、お、怒らないんですか?」
「何を?」
「えっと・・・遅れてきたこと・・・とか・・・」
「別に・・・どうでもいい」

おずおずと切り出すスバルに返ってきたのは、思いもよらない言葉だった

「え?」
「お前等が遅刻して成績が落ちようが、俺には関係無いしな・・・そこまで面倒見る義理もない。お前等の成績を落とすつもりは無いが、上げるつもりもない・・・」

淡々とそれだけを言う

「あと・・・」
「な、なんですか?」

一度言葉を切る綾人にティアナが先を促す

「俺に必要以上に関わらないほうがいい・・・でないと、痛い目を見ることになる・・・」
「え?」
「あの、どういう・・・」
「それだけだ・・・もう時間だな。行くぞ・・・」

綾人の言葉の真意を聞く前に、綾人が話を終わらせて歩いていってしまう

ティアナ達は、よく分からないまま綾人について行った・・・


「それでは、今日の訓練を始める! 今日から一週間は、上級生と合同訓練と言ってはいるが、内容は基本的にいつもと変わらない、では、各自移動!!」
[はい!!]

指定された場所へ移動していく訓練生達

「まずはラン&シフト・・・スバル? もう大丈夫よね?」
「もちろん!!」
「どうだかね〜・・・初日であんなことしたくせに・・・」
「む〜・・・ハヤトの意地悪!!」

順番待ちの間、そんな話をしている後輩三人

「あの・・・天童先輩!」
「あ?」

少し離れて訓練を見学している綾人に、ティアナが話しかける

「その・・・先輩のデバイスは・・・」
「・・・支給のボールスピア・・・」
「つまり、前衛なんですね?」
「ああ・・・」

それだけ聞くと、ティアナがプランを立てる

「そういうお前等・・・ランスターとナカジマのは・・・自前か?」
「あ・・・はい! そうです!! 実はこれ・・・お母さんの・・・」

綾人がスバルとティアナの持っているデバイスを見て聞くと、スバルが前に出て見せるが

「そこまで聞いてない・・・」
「あ・・・」

綾人は相変わらず話を強制終了させる

「次! 32番!!」
「「はい!」」「う〜い」

スタート位置に立つ4人

「・・・プランは?」
「あ、はい。スバルと先輩に先行してもらって、私とハヤトでフォローします・・・」
「・・・わかった」
「よろしくお願いします!」
「・・・・・・ああ」

前傾姿勢でスタートの合図を待つスバルと横で準備する綾人

「ゴー!!」

笛の音と共に走り出スバルと綾人

ティアナとハヤトもそれに付いていく


コーンを曲り、フラッグポイントにたどり着く

「よし! 次!!」



「うまくいったね!!」
「そうね・・・先輩も合わせてくれたし・・・」
「その先輩は、とっくに行っちまったけどな?」
「「あ・・・」」

ゴール地点で話しているスバルとティアナだが、ハヤトの言うとおり綾人は終わると同時に戻っていった

「なんか・・・暗い人だよね?」
「そうね・・・なんか、近寄りづらいというか・・・」
「な〜んか、入ったばっかの頃のティアナみて〜・・・」
「あ、なんかわかる〜」
「どういう意味よ!!」
「さっさと来い・・・」
「「あ、はい!!」」「う〜い」

いつまでもしてそうな言い争いを一言で両断する綾人


その後の垂直跳越や、その他の訓練も何事も無く済ませたハヤト達

綾人はティアナにプランの確認だけをして、それ以上のコミュニケーションを図ることはしなかった


そして、昼休み

「や〜っと飯か〜!」
「お腹すいた〜!」

昼食のチャイムが鳴ると、伸びをしながらそういうハヤトとスバル

「あ、先輩・・・お昼は・・・」
「先約がある・・・」
「あ・・・」

昼を一緒に摂ろうと誘う前に、断られてしまうスバル

「ま、そうなるだろうな〜」
「そうね・・・」

立ち去る綾人を見つめながら、何となく予想が付いていたハヤトとティアナ


〜校舎・屋上〜

「お〜い、天童〜!」
「こっちよ」
「ああ・・・」

屋上に出ると同時に、綾人を呼ぶ2つの声

1人はラウス、そしてもう1人・・・女性訓練生がいた

彼女の名前は“クリスティ・グラムゼル”(愛称:クリス)、綾人が訓練校に入った当初からの友人である

「悪い。すこし遅れた・・・」
「大丈夫よ? 私達も来たばかりだしね?」
「そうそう!」

綾人の手に持っている物を見ながら答えるクリスとラウス

「こっちがラウスの分・・・こっちがクリスの分な」
「ありがと」
「サンキュー!!」

それぞれに持ってきたものを渡す綾人

「いや〜、天童が友達のおかげで食費が浮いて助かるわ〜」
「・・・・・・後で金取るか・・・」
「ごめんなさい」

ラウスが冗談を言うと、割と本気で考える綾人

即座にラウスも謝る


綾人が渡したのは2人の弁当である

最初は自分の分だけを作って食べていたところを見つかり、それからは“4人分”を作ることになった

綾人としても、オカズが余る心配がなくなり助かってはいるので、断ることはなかった・・・

そして、自分も最後の一つを開ける

「ではでは・・・」
「今日のオカズは何かな〜?」

2人同時に蓋を開けると、そこには色とりどりのオカズが輝いていた

「うめ〜!」
「本当にね」
「自分で不味いもの作らねえよ」

喜びながら食べる2人にそう答える綾人

しかし、やっぱり顔は笑っていなかった・・・


「それで? どうだった?」
「なにが?」

食事が終わる頃、思い出したように綾人に聞くラウス

「合同訓練! お前の担当、トリオだったんだろ?」
「そうなの?」
「まあな・・・」

クリスが驚いて綾人に確認すると、短く答えて頷く綾人

「俺のところは、なかなか面白い奴らだったな〜・・・俺達のペアと息も合ってるし」
「もともと、ペアもそこらへんを考慮して考えてるんだから、当然じゃない?」

綾人に聞いたはずなのに、自分のことから話すラウス

「クリスは?」
「私? そうね・・・少し、危なっかしいと思ったかな?・・・まあ、ウチの相方が前衛の子をカバーしてくれるから、私も後衛の子のサポートに専念出来るからね・・・」
「そうか・・・」

クリスも、思い出しながら答える

「で、綾人は?」
「・・・・・・いきなり遅刻してきた・・・」
「「は?」」

3人とのファーストコンタクトから順に話していく綾人

「ほ〜・・・なかなか面白い奴らだね〜」
「そうだな・・・特に、ロックウェルからはお前と同じ臭いを感じた・・・」
「あ〜・・・モブキャラ臭?」
「誰がモブキャラだよ!!」
「お前だよ」「あんたよ」

ラウスのツッコミに2人同時に答える

「しかも、そのロックウェルって奴・・・女の子2人とチーム組むなんてな・・・くそっ! リア充め!!」
「それを、お前が言うのはどうかと思うが?」

綾人がラウスにツッコミを入れながら隣を見ると、クリスの顔が赤くなっていた・・・

「ラウスにはクリスが居るんだから大丈夫だろ?」
「あったりまえよ!! クリス以上の女なんていないぜ!!」

拳を握って力説するラウス

「普段の強気な態度の中から、たまに見せる女の子な部分なんてもうサイグハァ!?」

言い終わる前に殴り飛ばされるラウス

「恥ずかしいことを大声で言わない!!」

殴り飛ばしたのは、顔を赤くしていたクリスだった

「相変わらずのラブラブっぷりで・・・」
「う、うるさいわよ!!」

綾人にも睨み返すクリス

クリスはラウスの彼女で、付き合い始めてもう一年である

しかし、ラウスはことあるごとにクリスへの愛を叫び、そのたびにクリスに殴り飛ばされている

「ま、お幸せに・・・」

そう言うと、2人の弁当箱を包み直して、屋上から出ていく綾人


【ラウスSIDE】

「ふ〜む・・・」
「どうしたのよ? ラウス」

綾人が出ていくのを見届けた後、うなり出すラウス

「正直さ・・・俺、あいつに弁当作ってもらう資格ないんじゃね?」
「あ・・・」
「あいつが“ああ”なったのは、俺が原因なのにさ・・・」
「ラウス・・・」

うつむくラウスのそばによるクリス

「ラウスのせいじゃないわよ・・・あれは・・・タイミングが悪かったのよ・・・」
「そう、かな・・・」
「そうよ・・・綾人だって“折を見て話すつもりだった”って言ってたじゃない」
「そうだけどさ・・・」

クリスの言葉に、納得ができないラウス

「やっぱ・・・このままじゃ、いけねぇよな・・・」

そう呟いたラウスは、何かを決心した顔をしていた・・・が

「ラウス・・・とりあえず、そこから出ない?」
「ここに入れたのクリスだからな!?」

この会話の間。ラウスはずっと壁にめり込んでいた・・・・・・


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