立海大附属 ◆君を忘れない・3 それから2日間。 名前はいつものように来て、元気そうに明るく振る舞っていた。 大丈夫だよ精市くん。 名前はそう言うけど、俺にはわかってるんだよ? 元気に話してるけど、時々きつそうに、つらそうにしてること…。 名前は隠そうとしてるけど…俺は、気付いてるんだよ…? 「…ありがとう名前。名前に言われると大丈夫だと思えるよ」 「えへへ。手術は麻酔で寝てる間に終わっちゃうから、あんまり緊張とかしなくていいよ」 「うん」 「幸村くん、そろそろ手術の時間よ」 「あ、はい。わかりました」 「頑張ってね精市くん」 「名前……」 今、君から離れたらいけない気がする…。 これから手術なのに不安なのは君のこと。 …名前。 俺の手術が終わっても、君はここにいてくれるよね…? 「早く手術して、テニス部のみんなに元気になった姿を見せなきゃ。全国大会があるんでしょ?」 「…そうだね。名前は全国大会見に来てくれる?」 「えっ?う、うん。もちろん行くよ。先生に許可もらって」 「ふふ。無理そうだけどね」 「何よ〜。絶対行くって」 「……わかった。じゃあ、また手術が終わったら会おうね名前」 「うん。頑張ってね、精市くん!」 バタンと目の前のドアが閉まる。 頑張ってね…精市くん。 君なら大丈夫だから。 「……っ!!」 胸が苦しい…。 やっぱり精市くんの手術が終わるまで…保ちそうにないな…。 これじゃ、全国大会どころかもう会えそうにないや…。 ……… 「もう会えないなんて、嫌だな……」 あ。 そうだ。 手紙を書こう…。 手紙書くぐらいならなんとかなりそうだし。 精市くん…。 ごめんね…。 「そんな…」 名前…どうして。 俺の目の前には静かにベッドで眠る名前の姿。 名前は俺の手術の間に…亡くなってしまった…。 「名前…っ」 「…幸村くん、これを受け取ってくれる?」 「これは…?」 「名字さんが幸村くん宛てに書いた手紙よ」 「俺宛ての手紙…」 名前…俺に手紙を残してくれたのか…。 「最後に頑張って書いてたみたいなの。私は失礼するから読んであげてね」 「……」 精市くんへ。 ごめんね。 多分これを読んでるってことは、私もうここにいないんだと思う。 全国大会見に行けなくてごめん。 私ね。 実は、精市くんに会った日にお医者さんから一週間保たないって言われてたんだ。 それで、何も考えられなくなっちゃった。 前からそんなに保たないとは思ってたけど…実際に言われたら頭が真っ白になった……。 その時、精市くんを見つけたの。 話を聞いたら、ちょうど一週間後に手術って言うから。 私の残りの時間、この人と一緒にいたいと思ったんだ。 一週間だけだったけど、少しでも精市くんが楽しかったなら嬉しいな。 私は精市くんと過ごせて、すごく楽しかったよ。すっごく感謝してる。 同学年の男の子と話すの久しぶりだったしね。 それと、精市くんの手術成功したでしょ? 私が保証したんだから、当然だけどね。 精市くん。 これからは元気に頑張っていってね! 全国大会も、丸井くんや切原くん達と頑張って優勝してよね! 私、ちゃんと見てるから! あと、最後にもう一つ。 一週間だけだったけど、精市くんと仲良くなれて本当に良かった! 精市くんは… 私の一番の友達でした。 名字名前。 「……名前っ」 俺も君と仲良くなれて、良かったよ…。 名前…。 「みんな。今日は全国大会決勝だ。気合いを入れて行くよ」 「ああ。当たり前だ」 「我々立海の勝率は100%」 「ぜってー青学のヤツらを潰してやる!」 「気合い入ってるねぇ」 「仁王君。君も気合いを入れて下さいよ」 「俺らは無敵だろぃ?」 「ああ、そうだな」 「みんな行くよ!」 「おう!」 名前……。 見ててね。 俺達は絶対に勝つから。 俺は。 俺は…。 君を忘れないから…。 END [*前へ][次へ#] [戻る] |