BL小説 ◇感謝の気持ちを/ちとくら 君が居てくれて良かったと何度思ったことだろう。 遠いこの場所へとやって来て、わからないことが多かった自分をいつも助けてくれた。 そんな君に感謝の気持ちを伝えたい。 「白石、しーらーいーしー」 「なんやその呼び方。気色悪いで千歳」 「気色悪いってヒドかねー。そんな風に呼びたくなる時だってあるとたい」 「あー、はいはい。わかったから用事はなん?見てわかると思うんやけど、俺忙しいんやで?」 「それはわかっとると。ちょっと白石に言いたいことがあっただけ」 「俺に言いたいこと?」 「そう」 現在、夕暮れ時の教室には白石と千歳だけ。 白石が日直の仕事で教室に残っていることを知った千歳は彼の教室へとやって来ていた。 白石の座っている席の隣の席に座り、千歳は白石を見据える。 「白石」 「ん?」 「ありがとう」 「……なんや突然」 「それが言いたかっただけたいね」 「俺に、“ありがとう”って?そんなこと言われるようなこと最近した覚えないで?」 「んー、白石にとってはそぎゃんかもしれんけど、俺からすると違うとたい」 この四天宝寺へ転校して来てからどれだけ、白石の存在に助けられただろうか。 「転校してきて、わからんことが多かった俺に親切にしてくれてありがとう」 「……」 「分け隔てなく接してくれて嬉しかったと。部活でも世話になったばい」 「………」 「俺が部活サボってどこか行った時、探しに来てくれたこともあった」 「…それは仕方なくやろ。大事な時にどっか行ってしまう千歳が悪い」 「まぁ、そうかもしれんね。それと…他にも言わんといかんことがあった気がするとだけど、一番言いたいのは…」 「………」 「いつも傍に居てくれて、ありがとう」 なにかあった時、ない時でもいつも傍に居てくれたのは白石だった。 白石が居てくれると安心するし、素の自分をさらけ出すことが出来た。 その感謝の気持ちを込めて。 ありがとう、と伝えに来たのだ。 「……………」 「白石、黙ってどぎゃんしたと?」 「……反則やろ千歳」 「なにがね?」 「それは…」 「?」 「それは…こっちのセリフやアホっ!!」 「し、白石…?」 「なにが“いつも傍に居てくれてありがとう”や!!俺だってな、千歳がおってくれて感謝してるんやで!?」 いつも冷静な白石が怒鳴っている。 まさか怒鳴られるとは思ってなかった千歳は驚きを隠せないでいた。 「…俺からも言わせてもらうで千歳」 「な、なんね?」 「俺の傍に居てくれて、ありがとう…」 「白石…」 「俺だってな、千歳が居てくれて助かってるんや。せやからお前が一方的にそないなこと言うのはおかしい。互いに思ってることは同じなんや」 「同じ?」 「そうや同じや」 「……俺が白石のこと好きっていうのも、同じとね?」 「………好き?」 「そう、白石のことが好きと」 「……………」 「……………」 「……………………俺も、す、好きや」 「え?」 「せやから、俺も千歳のことが好きやって言うてんねん!!なに言わせてるんやアホっ!」 「ほんとにね?」 「ホンマや、何度も言わんからな!」 「この気持ちも同じとたい…。なら白石、もう一回言わせてほしいとだけど」 『ありがとう』、と。 END [*前へ] [戻る] |