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BL小説
◆そんな君が好き/光謙

「謙也先輩」

「…」

「謙也先輩」

「……」

「返事してくれんと、先帰りますよ」

「俺置いてくんやない!」

「やっと喋ってくれましたね謙也先輩」

「…置いてかれたら嫌やからな」



そう言って謙也はまた黙ってしまう。


すでに部活は終了し、他のテニス部員はさっさと着替えて帰ってしまった。


光は早く帰りたいと思っているのに、一緒に帰る予定の謙也は、着替えが終わると部室の中にあるイスに黙って座り一向に帰る気配をみせないでいた。



「先輩、何すねてんスか」

「すねてなんかない」

「今すねとるやん」

「…すねとらん」

「……」


謙也がこんな態度をとっている理由。


それは―。



「そんなに部長に負けたんが悔しかったんですか?」


「………」



今日の部活で、謙也は部長である白石と練習試合をした。


結果は謙也の負けだった。



「負けたゆうてもたまたまやんか。今日は謙也先輩の負けやけど、次は勝つかもしれんし。そない落ち込むなんて先輩らしくないですよ」


「……と」


「なんです?」



「…財前と、デートしたかったんや」



「え…?」



謙也が言ったことに、光は驚いた。




「前、財前言うたやろ。今度白石と練習試合して勝ったなら、俺とデートしてやってもええって」





確かにそんなことを言った。

けどそれは結構前に言ったことで…

まさか謙也先輩が覚えていたなんて…。



「…謙也先輩、もしかしてそれ覚えてて今日の部長との練習試合張り切ってたんスか?」

「……そうやって言うたら?」

「先輩のこと可愛いなって思いますわ」

「…な、可愛いやて!?」

「そうです」

「あのな財前っ!俺はほんまにっ…」

「謙也先輩」


光は謙也の荷物を謙也に投げ渡す。


「な、なんや?」

「まぁ、謙也先輩は部長に負けたけど。俺とそないにデートしたいんやったら、してやってもええですよ」

「ほんまか!?」

「なにえらい喜んでんスか」

「喜んだらあかんのか?」


「俺に聞かんで下さい。今から放課後デートってことでええですか?」

「今からか!?」

「先輩が嫌ならやめますよ?」

「いや、今からでええ!」

「なんすかそれ」

「よっしゃ、ほな財前行くで!」


勢いよくイスから立ち上がる謙也。



さっきまですねてたのにこの変わり様。



「謙也先輩、ほんま可愛いですわ」



「ん?なんか言うたか財前?」

「なんでもないっスよ」








そんな謙也先輩が俺は大好きですわ。









END


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